▽▲ 大人ノ玩具箱 ▲▽【イケメン戦国】(R18)
第14章 ▲月華美人▽ *明智光秀* -伍-
しっかりと、家康に瞳を向けて、ハナが微笑む。
「あの時…家康の御殿で、何も言わずに飛び出して行って…ごめんなさい」
「…バカなの?…そこは俺が謝るとこだから」
――謝るつもりなど、毛頭ないけど。
心で呟やき、ハナを見つめた。
ハナもまた、家康から目を逸らすことはなかった。
「家康の気持ちには、応え…られない」
聞かずとも、わかりきったハナの返事。
ハナの心を縛っているのは、自分ではないことも示唆していた。
「――光秀さんのこと、どうするつもり?」
家康のその言葉に、ハナは静かに微笑んだ。
「私はただ、光秀さんのこと…止めたいだけ」
ハナの瞳に、光が宿る。
空っぽだった体に魂が宿ったように、途端に色付くその表情。
家康の胸に、小さな針がチクリと刺さる。
「…止めるって?何を…」
家康の問いかけに、しかしハナは口を噤んで、俯いた。
溜息が出る。
家康、とハナが呼んだ。
「知っていたら教えて。光秀さん…今、どこにいるの?」
「…どこも何も、さっきまで軍議だったから、まだ、城のどっかにいるんじゃないの?」
「――っ!」
家康の言葉を聞くなり、ハナが立ち上がる。
その瞳はすでに、家康を映さない。
家康の横を、髪を靡かせ走り抜けていった。
「…謝った先から、同じことやらないでくれる?」
本当に、ハナの心はまっすぐだ。
ハナの残り香が、微かに香る。
香りの先を静かに振り返る。
「3度目はないですからね…光秀さん」
静かな声音に、怒りを込めた。