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▽▲ 大人ノ玩具箱 ▲▽【イケメン戦国】(R18)

第14章 ▲月華美人▽ *明智光秀* -伍-





「――…ハナ」



廊下の端から呼ぶ声に、ハナの肩がびくりと震えた。
金色の髪が揺れて廊下の角から現れ、翡翠の瞳がハナを遠慮がちに見つめていた。

「…家康…」

廊下の縁に腰掛けていたハナが、顔を上げて、その名を呼び返した。
家康と言葉を交わすのはいつぶりだろうか。
部屋へ訪れてくれることもあったが、障子越しであったために、面と向かって言葉を交わすのは…あの、紅蜜華の件以来になる。

「やっと部屋から出る気になった?」
「うん…世話役の仕事、長いこと休んでごめんね…」
「気になるんなら、これから頑張ればいいんじゃない?」

家康のぶっきらぼうな物言いに、ハナの顔が綻んだ。

「ありがとう、家康」

その笑顔に、家康の耳が僅かに染まる。
少しの間、躊躇った後、近くの柱に背を預けてハナを見た。


光秀の御殿から戻った直後、ハナは体調を崩した。


それ以降、何度となく家康は調合した薬を届けに、ハナの部屋を訪れていた。
しかし、ハナから障子を開かない限り、家康からそれを開くことはなかった。

「別に、礼を言われるようなことじゃない。あんた、相変わらずお人好しだね」
「家康の薬、すっごく効いたよ。届けてくれて、ありがとう」
「その割には、なかなか部屋から出てこなかったけど?」

「…ごめん」

困ったように微笑みながら、ハナがそれだけ、呟いた。
笑っている。
しかし、その笑顔は以前のハナとは、もはや別物だった。

「…変な顔。あんたにそんな顔させてるのは――…」



――誰のせい?



言いかけて、家康の言葉が淀み、途絶えた。
ハナには、家康の言わんとするところがわかったのだろう。



「…家康に、ずっと謝りたかった…」


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