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第14章 ▲月華美人▽ *明智光秀* -伍-
――夢を見ていた。
闇の中、ハナは波に漂う様に体を横たえ、揺れていた。
体中が軋む音を聞いていた。
耳奥で、ギシギシと――。
指一つ動かすだけで、唇から呻き声が漏れる。
瞼を動かすことも、億劫だった。
しかしどこか、他人事のように遠くに感じた。
ただ、心臓の痛みだけは、耐えられなかった。
拍動の度に、血が噴き出すかのように鋭い痛みが体中を駆け巡っていく。
闇の中に、独りきり…
涙に歪んだ闇の中に、やがて、白い蛇が現れる。
白蛇は静かに、ハナの瞼を上を這う。
痛みに軋むハナの肌を、音も無く這い回った。
白蛇の体は、仄かに温かい。
肌の上を白蛇が這って行ったあとには、痛みがふっと和らいでいく。
白蛇がハナの体中を這っていく。
ハナは静かに起き上った。
気づけば、体の軋みは消え失せていた。
だが、心臓の痛みだけは消えなかった。
その痛みに、ハナはなぜか安堵していた。
コレだけは、無くしたくない。
鼓動を抱えて蹲る。
髪にふわりと触れるものがあった。
顔を上げる。
目の前に、白蛇がいた。
白蛇の瞳は黄金色。
ハナをじっと見つめる瞳が、なぜだかとても、悲しげに見えた。
ハナの頬を、涙が流れる。
白蛇の顔が、ハナの頬にすり寄ってきた。
それはまるで、涙をぬぐう仕草に似ていた。
白蛇はすぐに、ハナの傍から離れていく。
離れるほどに、その体が闇に黒く染まっていく。
手を伸ばす。
しかし、その手は届かない。
ハナの唇が名前を呼んだ。
蛇は振り返り、闇へと消えた。
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「…みつひで、さん…」
ハナの譫言が、障子越しに聞こえた。
夢でまで、恨んでいるのだろうか。
ハナの自室前。
湯を湛えた桶と手拭いを手にした男が、静かにその場を立ち去って行った。
白銀の髪が揺れていた。