• テキストサイズ

▽▲ 大人ノ玩具箱 ▲▽【イケメン戦国】(R18)

第14章 ▲月華美人▽ *明智光秀* -伍-





――夢を見ていた。



闇の中、ハナは波に漂う様に体を横たえ、揺れていた。

体中が軋む音を聞いていた。
耳奥で、ギシギシと――。

指一つ動かすだけで、唇から呻き声が漏れる。
瞼を動かすことも、億劫だった。


しかしどこか、他人事のように遠くに感じた。


ただ、心臓の痛みだけは、耐えられなかった。
拍動の度に、血が噴き出すかのように鋭い痛みが体中を駆け巡っていく。


闇の中に、独りきり…


涙に歪んだ闇の中に、やがて、白い蛇が現れる。
白蛇は静かに、ハナの瞼を上を這う。
痛みに軋むハナの肌を、音も無く這い回った。


白蛇の体は、仄かに温かい。
肌の上を白蛇が這って行ったあとには、痛みがふっと和らいでいく。

白蛇がハナの体中を這っていく。
ハナは静かに起き上った。
気づけば、体の軋みは消え失せていた。

だが、心臓の痛みだけは消えなかった。
その痛みに、ハナはなぜか安堵していた。


コレだけは、無くしたくない。


鼓動を抱えて蹲る。
髪にふわりと触れるものがあった。

顔を上げる。
目の前に、白蛇がいた。

白蛇の瞳は黄金色。
ハナをじっと見つめる瞳が、なぜだかとても、悲しげに見えた。

ハナの頬を、涙が流れる。

白蛇の顔が、ハナの頬にすり寄ってきた。
それはまるで、涙をぬぐう仕草に似ていた。

白蛇はすぐに、ハナの傍から離れていく。



離れるほどに、その体が闇に黒く染まっていく。



手を伸ばす。
しかし、その手は届かない。

ハナの唇が名前を呼んだ。



蛇は振り返り、闇へと消えた。



△▼△ ▼△▼ △▼△ ▼△▼ △▼△



「…みつひで、さん…」



ハナの譫言が、障子越しに聞こえた。
夢でまで、恨んでいるのだろうか。

ハナの自室前。
湯を湛えた桶と手拭いを手にした男が、静かにその場を立ち去って行った。

白銀の髪が揺れていた。


/ 292ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp