▽▲ 大人ノ玩具箱 ▲▽【イケメン戦国】(R18)
第14章 ▲月華美人▽ *明智光秀* -伍-
―― 甘イ 蜜ヲ アゲマショウ…
雑音がする。
―― オ代ハ アナタノ 甘イ 夢…
ハナを犯したあの夜から、昼となく夜となく、耳に響く鈴の声。
淡々とただ、耳に響く。
それがやたらに、心を蝕む。
躰が、独りでに熱を持つ。
手に、その柔肌の感触が蘇る。
耳に、その声がこだまする。
眼に、ハナの涙が映る。
なぜに、心が乱される。
『 貴方が 好きです… 』
傷ついた瞳のお前が、何を言う。
お前が絡むと、調子が狂う。
そんな顔を、させたかったわけではない。
ただ、お前が笑っていられるならと。
――それこそを、望んでいたはずなのに。
筆を手に取る。
紅蜜華に、唯一関わることのなかった男の顔を、思い浮かべる。
蒼い瞳の隻眼の男。
あの男なら、お前を満たすことができるだろうか。
部屋へと呼び出す文面を、すらすらと白紙の上に認めていく。
筆を走らせながら、自嘲する。
己に惚れた女に、他の男を宛がうなど…
全くもって、俺らしい。
書状を書き終え、筆を置く。
座椅子に深く背を預け、天を向いて瞳を閉じた。
――あぁ、月が見たい。
浮かぶのは、涙に濡れた顔ばかり…