▽▲ 大人ノ玩具箱 ▲▽【イケメン戦国】(R18)
第13章 ▲月華美人▽ *明智光秀* -肆-
己の腕を締め上げて、自らの言葉に表情を苦痛に歪める秀吉を見た。
―――信長様暗殺を謀った黒幕
それは、城下に自ら広まるように仕組んだ噂だ。
思いのほか早くに秀吉の耳に届いたことに、ほくそ笑む。
しかし、秀吉の表情に、光秀の表情もわずかに曇る。
(素直に疑えばいいものを……まだ、俺を信用しようともがいているのか…)
こちらにも計画がある。
――俺自ら、謀反に仕立て、敵陣に潜り込む。
目の前の男が、到底気に入る策ではないが。
噂に踊らされてもらわねば困る。
「――ただの噂だろう?」
あえて、煽るように言葉を選ぶ。
「ただの噂であるなら願ったりだな!そのことを、信長様の前で証明して差し上げろ!」
「そんなもの、とうにお前がしているだろう」
「お前自ら、潔白を証明しろと言っているんだ!」
思った通りに、秀吉の自分に対する疑惑が膨れていくのが、見て取れた。
その腕は、胸倉を掴みかかりたくて疼いているのだろうに。
それをしないのは、ハナの存在があるからか。
そういえば、自分から話を聞きたいと言っておきながら、ハナがやけに静かなことに気が付いた。
感情を削いだ光秀の目が、ちらりと、傍らのハナを捕える。
その顔が、光秀の心の臓を僅かに揺らした。
「光秀さん…今の、話…」
ハナの瞳が凍り付いていた。
蒼褪めて、唇を震わせていた。
それは、いつか、見た覚えがある。
『俺は、一体何をした?』
『それは…言えません!』
そう言った時の、ハナの瞳の奥の色。
その言葉が、脳裏に過る。