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第13章 ▲月華美人▽ *明智光秀* -肆-
久方ぶりにあったハナを、光秀は見違える思いで見つめていた。
望月の晩、あれほど心細げに項垂れていた小娘が、今目の前で、自分を前に何を怒ってかはわからないが、目を吊り上げている。
随分、面白い変化をしたものだ。
ハナの反応は、十分光秀の興を誘った。
「何を怒っている。俺に意地悪されなくて、寂しかったか?」
「さ、寂しがる所、そこじゃないですっ」
否定しながらも、顔を赤らめ上目遣いに睨んでくる。
その言葉の一点が、ふと光秀の心に留まる。
「そこ『では』、ないのか。なんだ、寂しかったのは本当なのか?」
揶揄いのつもりの一言。
しかし、こちらの思惑に反してハナはさらに顔を赤らめながら俯いてしまった。
その姿には、面食らう。
「……ハナ?」
「――あの日から、全然光秀さんを見かけなくて……」
火照った顔を背け、何かを堪えるように、ハナが肩を震わせていた。
しかし、その震えを振り払うかのように、ハナがさっと顔を上げて光秀を見上げた。
「心配……しました。いけませんかっ?」
その瞳が、星の光を受けて輝く。
まるで…光そのもののように、ハナを光り輝かせていた。
その輝きが、光秀の心に惑いを生じた。
しかし、それは表情に現れることもなく。
ハナから目を逸らし、自嘲した。
「ほう…幸運を呼び込む娘が、俺の心配か……それは、光栄なことだな」
「光秀さん、あの――」
「――光秀っ!!」
廊下の端から、もう一つ蝋燭の明かりが現れ、怒気を隠そうとしない声が己を呼んだ。
その声に、光秀は内心、舌打ちをする。
今、最も避けたかった人物。
織田信長の右腕、自身の相棒…
――豊臣秀吉が、険しい表情で、廊下をこちらへ向かってきていた。