▽▲ 大人ノ玩具箱 ▲▽【イケメン戦国】(R18)
第13章 ▲月華美人▽ *明智光秀* -肆-
今宵は、新月。
月の出ぬ夜に、ハナはひとり。
自室前の廊下に腰掛け、夜空を寂しげに見上げていた。
生ぬるい風が、ハナの首筋を撫で過ぎていく。
髪を風にとられながら見上げる瞳は、憂いに沈んで星々の光を反射していた。
光秀と月を眺めたあの晩から、月を眺めることが増えた。
しかし、光秀が庭に現れることはあれ以来、一度もなくて。
「…昼間にだって、会えないなんて…」
軍議の席に呼ばれてみても、光秀の姿は見当たらなかった。
そのことを、信長に尋ねるが。
『あれにはあれの、やり方がある。放っておけ』
その一言で一蹴された。
他の武将にも行き先を尋ねてみたが……
――それは……俺が知りたいくらいだ。
――ここ最近はお忙しいご様子ですね
――気にするだけ、無駄なんじゃない?
そんなの、誰も知りっこないから…
――あいつのことが気になるか?
心配すんな、死にやしない。
「…早く…」
口唇が、無意識に呟いた。
その先にどんな言葉を紡ぎたいのか。
ハナには、わからなかった。
――カサリ。
不意に、池の方から音がした。