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▽▲ 大人ノ玩具箱 ▲▽【イケメン戦国】(R18)

第12章 ▲月華美人▽ *明智光秀* -参-





――昨夜は、望月。

  今宵は、十六夜月(いざよいつき)。



――否。

  不知夜月とも言う。



今宵の月はやけに明るい。
欠けながら、しかし望月より長く地表を照らし、夜を悟らせることの無い明月。

望月を過ぎれば、月の出は徐々に遅くなる。
そこから「いさよう(ためらう)月」と言われたとの説もある。

「へ~え?明智様は何でもご存じ」

光秀の胸に、白い女の指が掛かる。
爪は美しく、血が匂うように紅く整えられていた。



薄暗く、明かりを抑えたその部屋には、情欲を煽るような紅い壁。



部屋には物は少ない。

徳利を乗せた豪奢な文机が一つ。
女の使う、鏡台一つ。
窓一つ。

そして褥が一組だけ敷かれていた。
そこだけ薄ら寒い清廉を示すかのように、やけに真白く浮きだっている。

その上に、赤い襦袢を軽く纏い、女がしどけなく俯せて、上半身だけを起こしてその手を光秀に沿わせていた。
光秀もまた、上衣は脱ぎ去り、袴をだらしなく腰に巻き付けているのみの姿で、窓辺に背を預けて月を見ていた。

「…今日は随分、優しいお顔でいらっしゃる」

女の言葉に、光秀は視線だけ女にくれる。

「そう見えるか?」
「少なくとも、明智様の心はここにはおられないのでしょう?」

女の紅い爪が、かりっと光秀の心の臓の真上をひっかく。



「どなたの元へ行かれたのでしょう?」

「…お前を前にして、他の女を想える男がいると思うか?」



光秀の黄金の瞳が、月光を映し妖しく揺れて、女の上に覆い被さる。
口唇に触れ、首筋に舌を這わせて、熱い吐息を耳元へ送り込んでやれば、女はすぐに、蕩けた微笑みを浮かべて見せた。



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