▽▲ 大人ノ玩具箱 ▲▽【イケメン戦国】(R18)
第11章 ▲月華美人▽ *明智光秀* -弐-
「…貴方は、違うと思ったから」
「ん?」
ハナが、ぽつりと呟いた。
「私のいた世界での光秀さんが
どういう人でも、それは今の光秀さん
とは違う人だと思いましたから」
光秀の目を、気が付けば見つめていた。
光秀もまた、ハナの顔を見返していた。
その口唇が、ゆらりと弧を描く。
「なるほど、碌なことはしていないようだ」
「それはっ…でも、違いますから!」
向きになって言い返すハナを、光秀はますます面白そうに瞳を細めた。
ハナは口をぱくぱくさせて、何か言いたげにしていたが、やがて諦めたように溜息をついた。
「とにかく、せっかくこうして目の前に
本人がいるんです!
私は自分の目で見て考えます!」
「では、しっかり見定めることだ」
ハナの頬を、光秀のひんやりとした手が擽った。
拗ねたように、ハナが横目で、光秀を睨む。
その仕草に微笑みながら、光秀の口唇が囁いた。
「先の世で、お前のように思う人間が
いるというのは…救いだな」
「光秀…さん?」
見上げた光秀の顔は穏やかで。
硝子のような昼間の瞳とは違い。
温かな温度を湛えて、ハナを見ていた。
――私が、この時代へ来た理由は…
あるのかもしれない…
そんな想いが、胸に浮かんだ。
光秀が、ハナの顔を再び見つめた。
その指が、ハナの頬を優しく撫でた。
――この人を、もっと知りたい
謀反人で、終わらせたくない。
『お前はここにいることを許されている』
先の光秀の言葉が脳裏に蘇る。
ここにいてもいいのだと、言われたような気がした。
この時代に飛ばされてきて、初めて心が解けるのを感じていた。
ハナの頬を擽る光秀の指が、ハナの涙で濡れて月光に煌めいていた。