▽▲ 大人ノ玩具箱 ▲▽【イケメン戦国】(R18)
第11章 ▲月華美人▽ *明智光秀* -弐-
天正10年6月。
満月の夜。
自室前の縁側に座り、ハナは、打ちのめされていた。
何の因果か、500年もの時を越えてこの時代に辿り着き、挙句、かの有名な織田信長を助けてしまい…
(なんで、私はここにいるんだろう…)
城の人たちは、皆いい人だ。
名立たる武将らが一堂に会しているこの状況は異様だが、癖はあるものの、みなそれぞれにハナの身を案じてくれているらしい。
一般人として生きてきたハナにとって、その待遇はかなり落ち着かないものではあるが、同時に感謝もしていた。
(それでも…)
馴染まない。
この時代は、ハナの生きてきた時代とは根本的に、異なっていた。
――死が、近い。
今日も昼間、軍議に呼ばれた。
近々、戦が起こるという。
兵站の準備や兵の招集…テキパキと、それこそ事務的に取り交わされるその空気に、ハナは完全に当てられていた。
言葉一つ、わからなくてついていけない。
要所要所で三成が分かりやすく説明を加えてくれたが、それが却ってハナを落ち込ませていた。
(私にできること…あるのかな)
世話役を命じられ、できるかぎり城の手伝いをさせてもらっている。
それすら、姫との扱いが壁となって十分に任せてもらえていない。
自分で考えて動けないことが、こんなにも気持ちを打ちのめすのだと改めて実感していた。
夜空を見上げる。
そこには、真円の月が浮かんでいた。
庭は緑の活気を眠らせて、月光の中青白い静かな衣を纏って横たわっていた。
そこかしこから、死の気配がする。
寒気を感じ、ハナは自分の体をきつく抱きしめた。
――不意に。
カサリと、庭の先から音が聞こえた。
視線を上げて、ハナの鼓動がドクンと高鳴った。
庭に掘られた池の畔に、ぼんやりと白い影が揺らめいていた。
それは、空を見上げているようだった。
(幽霊…っ!?なんて、そんなわけ…ないよね?)
心臓が早鐘を打つに任せて、ハナは慎重に、息を吐く。
もう一度、じっと視線をこらしてから、ハナの鼓動が再びドクンと高鳴った。
「光秀、さん…?」