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第8章 ▼華ニハ蜜ヲ△ *織田信長ルート*
――そよそよと。
頬を撫でる肌に心地よく冷えた風に、ハナはふっと目を覚ました。
ぼんやりと視線を彷徨わせれば、辺りは暗く、張り出しへの扉から月光が優しく差し込んでいた。
張り出しがある…ではここは、天主なのか。
掌に柔らかい布地の感触…。
そこは褥の上だった。
「起きたか…」
「――信長様…っ?」
声の先へと顔を上げると、ハナの枕元で、ハナを覗き込むように座る信長の姿があった。
慌てて体を起こすが、なぜか、体が気怠い。
何気なしに、手を胸元へやり視線を落とせば、朝から纏っていた着物をきちりと着ており、横になっていたのに着崩れひとつない。
――着崩れ、ひとつ…
「――あっ!」
ようやく、この部屋へ来てからのことが思い出された。
「信長、様――っ私、あの――っ!」
羞恥心に耐えられず、起こした上体を再び褥に沈めて顔を伏せてしまう。
そんなハナの頭上から、笑いをかみ殺すかのような声が降る。
「忙しない奴だ、目を覚ますなり呆けたかと思えば…」
不意に、信長の香りがハナを包む。
「よくぞ待たせてくれた――
…よもや、無事に済むとは思うな」