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第8章 ▼華ニハ蜜ヲ△ *織田信長ルート*
「……ハナ」
信長の手が、ハナの頬へ触れようとした刹那。
「――っ!」
ハナの瞳が強く閉じられ、びくりとその身を震わせた。
思わず、信長の手が止まる。
「……俺が、怖いか?」
「――あ…っ」
ハナの瞳が開き、信長を見上げる。
その瞳には動揺の色が浮かんでいた。
「ち…ちが…っ」
しかし、言葉とは裏腹に、ハナの瞳から大粒の涙が零れだす。
「の、ぶなが、様…っ」
顔を隠すように、ハナが顔を信長の胸元へ押し付け、声を堪えて泣いていた。
その背中に、信長の手がそっと添えられた。
「ちがう…違うん、ですっ!信長様…私、嬉し、のに…っ!」
「ハナ…」
「…好きです…信長様、愛していますっ!」
涙に揺れる声を隠すように、ハナが叫ぶ。
「なのに…どうして…」
貴方が 見えない。
いつしか、茜は沈み切り、張り出しの外を、静かに雨が降り出していた。
信長の耳に、その雨音がうるさく響く。
その音に紛れながらも、確かに信長の心に届いたその言葉。
小さく震えるその体を、信長の両手が優しく閉じ込めた。
そうして、深く、息を吐く。
「全くもって……下手を打った」
「……ごめ、な…さっ」
「貴様ではない……俺のことだ」
腕の中、ハナの躰は震えながらも、甘い香りを纏って誘う。
その香りのもたらす熱を、躰の奥に押し込める。
「紅蜜華の香りには、男を誘う効用がある。知っておっても、飲まれかけた」
腕の中、ハナが声を堪えて泣いていた。
「聴け……ハナ」
ハナの顎に手を添えて、できるかぎり、そっと持ち上げる。
多少の抵抗を見せながら、それでもハナは、促されるままに信長を見上げた。
頬を流れる涙を、信長の手が優しく拭う。
「飲まれかけたが、言葉までは奪われておらん……しかと聞け」
「信長様…」
「俺は貴様を――愛している」