▽▲ 大人ノ玩具箱 ▲▽【イケメン戦国】(R18)
第8章 ▼華ニハ蜜ヲ△ *織田信長ルート*
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この命を救っておきながら、褒美はいらんと逃げ出した。
盃の代わりをしろと命じれば、酒を飲み干す。
夜伽を命じれば、嫌だという。
それまでの女とは、何もかもが違っていた。
その反応が興味をそそり、気まぐれに城に置いてみれば。
じっとすることなく働きまわり、家臣らともいつの間にやら打ち解けて。
いずれも名立たる武将を相手に、いとも容易くその懐に入り込む。
見ていて飽きることがない。
それはいうなれば、珍妙な生き物を愛でるのに似ていた。
だからだろうか。
”かれし”なる言葉の意味を、貴様が口にした時には、驚いた。
ただ、驚いたとしか言いようがない。
それが、なんという感情なのかは知らないが。
ただ、その時の貴様の微笑みだけは鮮明に覚えている。
その笑みは、確かに誰かを想ったものであった。
お前の心が誰に向いているのか。
それを思うと、ひどく胸の内が乱された。
お前が一人の人間であるということ。
――女であると、いうことを…
今更ながらに、思い知る。
だから、ただ見届けてやるつもりだった。
お前が笑顔を向ける相手を見定めてやろうと。
手折られぬなら、根付かせるまで。
枯れぬように縛り付け、いつまでも、その姿を愛で続けていられるようにと。