▽▲ 大人ノ玩具箱 ▲▽【イケメン戦国】(R18)
第8章 ▼華ニハ蜜ヲ△ *織田信長ルート*
「…私の望みを、知りたいのですか?」
紅玉の瞳を真正面から睨み返して、ハナが挑むように切り返す。
その声音に、しかし信長の瞳は揺らぐことなく見つめ続けていた。
「申せ。貴様の心が、求めていた者の名を」
「……私も、わかりませんでした」
「……は?」
信長の口から、思わず気の抜けた声が出る。
その声に、ハナはふっと吹き出した。
「――っあぁもう…私、本当に怒ってるんですよ!…なのにっもう!」
止まらなくなったくすくす笑いを堪えるように、ハナが手で口元を押さえて俯いてしまう。
その様子を、しかし信長は怪訝そうに見つめ返した。
「奇妙な女だ…どこにそれほど可笑しいことがある」
「本当ですね……どうしたんでしょうね、私っ」
瞳に涙を滲ませながら、ハナが笑いを堪えて言った。
「信長様が、今日はとても可愛く見えて…それがもう、可笑しくて」
母親が子どもを慈しむような声音。
不思議と心地よく、その言葉の意味にも、腹が立たない。
信長の内にある不可思議な感情が、徐々に輪郭を得る思いがした。
「それから……信長様。私は少し、哀しかった…」
ハナの瞳から、一滴だけ、涙が零れた。
それがどれほど、信長の目に美しく映ったか。
「今から私がすることを…怒らないで、くださいね」