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第8章 ▼華ニハ蜜ヲ△ *織田信長ルート*
城へ戻ったハナは、部屋へ戻るその途中で、書庫を覗いた。
三成は相変わらず、そこで書物を読み耽っている。
こちらへ背を向け気付かない三成を、ハナはどこか懐かしむ思いで見つめ、そっとその場を後にした。
自室に戻り、裁縫道具を取り出す。
文机の上の乱れ箱から、縫いかけの長羽織を丁寧に取り出して、針山から針を一本摘まみ上げた。
時の鐘が、午の正刻(12時)を告げていた。
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――茜差す、天主の廊下。
ハナが手に何かを抱え、歩いていた。
信長の部屋の前まで来ると、大きくひとつ、深呼吸をする。
「…信長様っ入ります!!」
気合いを入れるかのように、一息でそう叫ぶと、返事も待たずに自ら襖を開いた。
開け放った部屋を見渡すが、そこには信長の姿はない。
全身からどっと力が抜け、へたり込みそうになった矢先。
ハナの耳に、声が届いた。
「――ハナか?なぜ、戻ってきた?」
声のする方へ、振り返る。
張り出しに繋がる扉は開かれ。
豪華絢爛を極めた部屋に、茜の夕陽が差し込んでいた。
斜陽を背に纏い、欄干に凭れるように、信長の姿がそこにあった。