▽▲ 大人ノ玩具箱 ▲▽【イケメン戦国】(R18)
第8章 ▼華ニハ蜜ヲ△ *織田信長ルート*
「――ハナ」
家康の御殿を出てすぐ、大手道の上手から誰かに声をかけられた。
見上げると、光秀が城から下ってくるのが見えた。
「光秀さん…」
「家康まで、書状を渡し終えたか」
光秀はいつものように、感情の見えない笑みを浮かべてハナの側に歩いてきた。
その手には、大きな傘が握られていた。
「…変わりは、ないか」
光秀の言葉に、ハナは確信を得る。
「光秀さんは、知っていたんですね」
「…お前の好きに考えろ」
硝子細工のような瞳で、光秀はハナへの返答をはぐらかす。
「光秀さん、私――」
ハナが何かを呟こうとした、その瞬間。
一陣の風が、二人の間を吹き抜けた。
風の行き先を追うように、ハナは安土山の麓を見遣った。
はるか麓には、信長の政策の元で栄える城下町が広がっていた。
城下町へ繋がる道のその途中には、小さく政宗の御殿が見えた。
道に沿って視線を戻せば、家康の御殿と向かい合うように秀吉の御殿。
そうして再び光秀を見た。