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第7章 ▼華ニハ蜜ヲ△ *明智光秀ルート*
「――…はぁぁ…」
温かな湯船の中、ハナが盛大に溜息をつく。
湯殿についてからも、女中たちの世話焼きは留まることを知らず。
湯着を着せられ、髪を清められ、背中を流され。
そうしてようやく解放されて、一人になれた。
湯船の中、白い湯着が海月のようにふわふわ揺れるのを、ぼんやり眺めていた。
いつの間にか、涙のことを忘れていたことに気付く。
温かな湯に浸かり、幾分か頭も働く。
そこでようやく、家康の言葉を思い出す。
――紅蜜華は、人の恋情に反応して効用が出る
「―――…恋情…っ」
その一言で、ハナの頭は思考をやめるように警鐘を打ち鳴らす。
けれども、別の意識があるかのように、家康の声が続けて脳裏に響き渡った。
――…肌に触れれば、動悸や発汗での興奮作用が現れる…
「…肌に…触れれ、ば…?」
警鐘はさらに響きを増す。
しかしその音の奥に、ハナは微かな違和感を見た。
それは蜘蛛の糸のように頼りない、ささやかな違和感でしかなかったが。
切れぬように、見失わぬように。
ハナは記憶の糸を、静かにゆっくり、辿っていった。