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第7章 ▼華ニハ蜜ヲ△ *明智光秀ルート*
どうやって、家康の腕を抜け出したのかわからない。
そもそも、家康があまり力を入れてなかったのかもしれない。
胸に光秀への書状を抱きしめて、家康を振り返ることなくハナは御殿を飛び出した。
ただひたすらに、大手道を駆け下りた。
いつの間にか、空を覆っていた黒い雲から、冷たい雨が降り出していた。
髪が、着物が、雨に濡れて肌に張り付く。
だけども、書状だけは大切に、懐深くにしまい込み。
ハナはただ、雨の中を走り続けた。
「――あっ!!」
ブツッという感触がして、途端にハナの体が、雨にぬかるんだ道に投げ出された。
「痛…っ」
見れば、鼻緒が切れていた。
大分長いこと駆けてきて、肩で息をするほど呼吸が荒くなっていた。
汗と雨で張り付く髪をかきあげて、周囲を見渡す。
そこは、政宗の御殿の側だった。
「…政宗の書状っ…置いてきちゃった…」
無我夢中で飛び出して、政宗の書状を置き去りにしてきたことを思い出す。
これでは、訪ねることもできない。
もとより、この姿では……
「何、やってるんだろ…私…」
雨脚はいよいよ強まり、ハナの体に打ち付け、その体温を奪っていく。
蒼褪めた唇を震わせる。
しかしそれは、寒さのせいではなく……