▽▲ 大人ノ玩具箱 ▲▽【イケメン戦国】(R18)
第2章 ▼華ニハ蜜ヲ△ *共通ルート*
信長の部屋を出て、大量の書状を抱えて、ハナは溜息をつきたくなった。
これから、それぞれの御殿を回ることを考える。
それぞれの御殿はそう離れてはいないが、近くもない。
「軍議のある日じゃ、ダメだったのかな…」
思わず本音が漏れる。
しかし、思い直してハナはぶんぶんと首を振った。
「せっかくお仕事任せてもらえたのに、こんなこと考えちゃ駄目だよね……うん!がんばろう!」
気を取りなおして書状を持ち直すと、前方からククッと小さな笑い声が聞こえた。
ギクっと顔を上げると、白銀の髪に黄金の瞳の男が可笑しそう肩を震わせて立っていた。
「こんな朝早くから百面相の練習か?お前は本当に、見ていて飽きないな」
「み…光秀さん、見てたんですかっ?」
光秀はいつもの笑みを浮かべたまま、小首を傾げて見せた。
「おかしなことをいう。勝手に見せたのはお前だろう」
「見せたくて見せてませんっ!」
真っ赤になってむくれるハナの顔を、光秀はなおさら面白そうに瞳を細めて覗き込んだ。
「こんな朝早くにどうした?御館様に呼ばれたか―――…ん?」
光秀の笑みがすっと消え、怪訝な表情を浮かべた。
「な、なんですか?」
「ハナ…香でも焚いたか?…いや、この香りは…」
光秀が顎に手を添え、何か思案する様子を見せる。
ハナも自分の体を見渡してみる。
「何か、香りますか?そういえばさっき、信長様に良い香りのする砂糖菓子をいただきましたけど、その香りかな…?」
「砂糖菓子?」
「先日届いた献上品だっておっしゃってましたけど………」
「あるにはあったが……しかしあれは……」
先ほど信長に見つめられた時の不安が、ハナの心に湧き上がってきた。
「あれは……なんですか?」