第10章 100%で望む理由
最後になんともしまらない唱和をして─といってもみんかバラバラだったけど─制服に着替えてから教室に集まった。明日明後日は休校。相澤先生の話を聞いて、解散となった。
今日は早く帰ってゆっくり休もう。そう思って席を立つと、焦凍くんが私の正面に立った。
「」
『ん?』
なにか思いつめたような、言葉を選んでいるような、そんな表情。焦凍くんの言葉を待っていると、意を決したのか泳いでいた瞳が真っ直ぐ私を映した。
「付き合ってほしい」
「……え」
「と、とととどどろきっ!?」
「「「きゃああああああああああああああああああああああああああああ!」」」
一斉に響き渡る女子の声。大きな声という訳でもないのに、焦凍君の声はみんなに届いたらしい。焦凍くんの言葉よりみんなの声量にこっちがびっくりだ。
「轟さんったら大胆ですわねっ!」
「嘘でしょ!公開告白っ!?」
「轟も狙ってたのか…」
周りからいろんな声が聞こえてくる。
『いいよ』
「「「「「えええええええええええええっ!!!」」」」」
「嘘だろっ!?」
「いやでも、悔しいけど轟には適わねぇよっ!!」
「緑谷どんまい」
「えっ?」
焦凍くんに一言返せば再び周りが騒ぎ出す。何をそんなに興奮しているのだろう。特に三奈ちゃんやお茶子ちゃんは目をキラキラさせてこちらを見ている。そんな視線向けられても…
『どこに付き合えばいいの?』
「ベタだ」
「天然すぎるわちゃん」
「どんまい轟」
「…病院」
「「「……………」」」
先程まで騒がしかったクラスが一気に静寂に包まれる。今までのやりとりが何も無かったかのように、カバンを持って教室をあとにする人もいる。一体なんだったんだ。
にしても焦凍くんが病院に付き合ってほしいだなんて。怪我はリカバリーガールに治癒してもらっているし。焦凍くんと仲良くなったきっかけのあの日に、病院の近くにいたけど、あれは無関係なのだろうか。
「悪ぃな。また連絡する」
そう言って教室を出ていった焦凍くん。どこかに行っていたのか、焦凍くんと入れ違いで勝己が教室に入ってきた。