第10章 100%で望む理由
「目覚めたかい?全く…あんたもすっかりここの常連になっちまったね」
『あはは…確かに』
「笑い事じゃないさね」
『すみません』
「もうすく表彰式だよ。3位だってね。おめでとう」
『ありがとうございます!』
リカバリーガールにお礼を言い、急いで会場へ戻る。もうすぐ表彰式ということは、勝己と常闇くんの試合も決勝戦も終わってしまったということ。うう…見たかった。悔しい。
『あいたっ!』
「っ、あんたは……」
「待ってよ~!なんで逃げるの~!」
割と本気で廊下を走っていると、角から出てきた人とぶつかってしまった。見事に顔面をぶつけた私は鼻を抑える。男の人と女の人の声。男の人の声は聞いたことがある。
「ちっ……怪我はねえか?」
『あ、はい。こちらこそ前を見てなく───』
ここで一旦私の記憶は途切れた。
『………ん?』
「そういうことだ。諦めてくれ」
「っ!!あ、あんたなんかちょっと可愛くておっぱいが大きいだけなんだから!!」
なんだこの状況。他校の制服を着ている女の子が、泣きながら私を指さして怒っている。大粒の涙を流してメイクが落ちていて、申し訳ないけど若干怖い。
「バカーーーー!!」
そう言ってどこかへ走っていった女の子。すぐ近くで大きなため息が聞こえた。肩に回されていた腕がゆっくりと離れていった。肩を抱かれていたなんて今気づいた。
『…え?』
「ああ、巻き込んで悪かったな」
『あ、確かデクと戦ってた普通科の……』
「そう。あんたいい人そうだから利用させてもらった」
利用…とはきっと洗脳のことだ。それはわかったけど、一体何があったのかはよくわからない。
『えっと…なにがあったの?』
「さっきの女。よくわかんねぇけど、つきまとわれてたんだ。一目惚れしたーとか言って。意味わかんねぇし適当に逃げてたけど、体育祭来てたらしくてさ。だからあんたを彼女だと紹介したってわけ。その為に個性使わせてもらった」
頭をポリポリとかいて面倒くさそうに説明する。面倒くさいと思いつつも、ちゃんと説明してくれるのは一応協力したからだろうか。
『……理由はわかった。でも、洗脳するなんて酷いよ』
「わかってるよ。自分でも敵向きの個──」
『ちゃんと説明してくれたら洗脳なんてしなくても協力したのに』