第10章 100%で望む理由
氷を溶かせばこの拘束から抜け出せる。まず左手を解いてから右手だ。右手が解放されたら、接近してくるを最低限度に凍らせればいい。
左側はすぐに溶けた。あとは右側を……
─でも逃げてばかりじゃダメなんだって思った。私だってヒーローになるんだって………だから、私は自分の個性を使って全力で焦凍くんと戦う!!─
試合前のの言葉が頭をよぎる。だって全力で俺に挑んできている。本当は個性を使うのも怖えくせに。
左の力は使わねぇ。
全力で挑んでくるに俺も全力で応える。
を傷つけたくねぇ。
もう頭の中はごちゃごちゃだ。
勢いをつけて飛んでくるは、右手を強く握っている。今からでも右側を溶かせば氷を使えるのに。俺の左手は無意識にに向けられていた。
緑谷戦に続きフィールド上に激しい爆風が巻き起こる。土煙での様子は見えない。
«おいおい!またかよっ!!一体どうなってんだ?»
「………?」
爆風によってフィールド上にあった氷はバラバラに砕け散っていた。にむけて放った熱の影響で、氷が溶けてところどころ濡れている。の姿は見えない。
「っ、上だー!!」
観客席から聞こえた声にハッと上を向く。翼を広げたがこちらに向かって飛んできている。
«まさか今のを避けたのか!?»
いや、ちげぇ。飛んできてるのではない。落ちてきてるんだ。今起きた爆風に飲まれ高く飛ばされたんだ。あの距離から落ちたら痛いどころじゃ済まない。
「っ!!」
急いで滑り台のように傾斜のある氷を生み出す。上手く軌道に乗り、氷の上を滑っているの元へ駆け寄ると、ボロボロの体で気を失っていた。
「……」
抱きあげようとするよりも早くミッドナイトがの様子を見る。
「…さん戦闘不能!轟くん決勝進出!!」
もう一度の元へ駆け寄ろうとするが、ミッドナイトに止められる。怪我させたのは確かに俺だ。救急ドローンに運ばれていくをただじっと見つめることしか出来なかった。