第10章 100%で望む理由
頭が混乱している。どうすればいいのかわからない。緑谷と戦ってからだ。ずっと戦闘において左は使わねぇと決めていたのに。
─君の!力じゃないか!!─
─なりたい自分になっていいんだよ─
─だから、私は自分の個性を使って全力で焦凍くんと戦う!!─
ぐるぐるといろんな言葉が頭の中で響き渡る。くそ、どうしたらいい。
緑谷戦の時と同じように右足で氷を生み出す。は軽々とそれを避けて空を飛んだ。
のことが好きだ。いつからかわからねぇが、今ならはっきりと言える。だからあんまり傷つけたくねぇ。氷で身動きを封じて参ったとか言わせりゃ大きな怪我させねぇで済む。
わかってはいたが、も簡単にそうさせてはくれず、氷を生み出しては回避されてしまう。
より一層高く飛んだは、その翼をより大きく広げ強い風を起こした。飯田ん時と同じように場外狙ってんのか。確かに吹っ飛ばされそうなほど威力のある風だが、後に氷の壁を作っちまえば関係ねぇ。
『……やっぱりそうくるか』
「俺も負けられねぇからな」
氷の上に氷を重ね、再びを捉えることに集中する。その度大きな風を起こし場外へ吹き飛ばそうとするが、同じように氷の壁でそれを防ぐ。翼から抜け落ちた羽も氷漬けされ、飯田の時と同じように使うことは無理だろう。
積み重なった氷の上に立って、翼を休める。そりゃずっと飛び続けるのには限度があるはずだ。俺の右手も冷気にふるえはじめている。だが、今がチャンス。威力を込めてを捉えようと氷を生み出す。
『何回やっても同じだよ!』
またもやひょいと躱されてしまう。の個性はどの個性とも相性悪ぃんじゃねえのか。氷を躱したは再び風を起こした。風に飛ばされぬよう背後に氷壁を作る。
「それはも同じ……」
背中がひんやりと冷たい。身動きができない。真っ白い羽が体操服に突き刺さっていて、氷壁に縫い付けられてしまった。また同じ風だけだと思い油断した。きっとそれだけじゃなくて、余計なことが頭から離れねぇからだ。
氷壁に縫い付けられた俺を見てが勢いよく飛んでくる。急いでこの拘束を解かねぇと。