第10章 100%で望む理由
次は三奈ちゃんと常闇くんの試合か。うむ、気になる。今のところ勝ち上がってきているのは全員Aクラスだ。やっぱりみんな強いんだな。
『あ、焦凍くん』
「…」
観客席へ戻ろうとした時、見慣れた後ろ姿を見つけ声をかける。振り向いたその表情は切ないような、寂しいような、そんな複雑なものだった。
「準決勝おめでとう…次、当たるな」
『そうだね。次よろしくね!』
「ああ」
デクとの試合で初めて見せた左側の個性。きっと焦凍くんをこんな表情にさせたのはそれが理由なんだろう。多分、対戦相手がデクだったから左の力を使ったんだ。根拠とかはないけど、なんとなくそう思える。
『焦凍くん。偶然病院で会った時、事件の話したよね。覚えてる?』
「…ああ」
『詳しく言ってなかったけど、私の個性のせいでお父さんとお母さんは事件に巻き込まれたの。私の個性を狙って敵が襲ってきたんだって……』
こんなことをなぜ焦凍くんに話しているのかわからない。でも、焦凍くんに聞いて欲しくて、自然と口から言葉が溢れ出す。焦凍くんはじっと私を見て耳を傾けてくれている。
『今回の体育祭は各地からプロヒーローが来てて、テレビでも中継されてて…だから、きっともう私の個性はたくさんの敵に知られてしまった。また敵に襲われるかもしれないって最初は怖かったけど、でも逃げてばかりじゃダメなんだって思った。私だってヒーローになるんだって………だから、私は自分の個性を使って全力で焦凍くんと戦う!!』
私の言葉は焦凍くんにどう捉えられたのかはわからない。ただ、焦凍くんは黙ったまま自身の左手を見つめていた。
焦凍くんと話し終えた頃には三奈ちゃんと常闇くんの試合が終わっていた。勝者は常闇くん。うーん、見たかった。勝己と切島くんの試合では、勝己が爆破で攻め続け硬化の個性を打ち砕き、勝己が勝利を掴んでいた。
自分の番が来るのは以外にも早いものだ。緊張しているけど、妙に落ち着いている。そんな不思議な感覚を抱き、フィールドへと歩き進む。
«準決!サクサク行くぜ!!推薦入学と特別入学のエリート対決!轟焦凍VS!スタァーーーット!!»