第10章 100%で望む理由
ここからだと2人の会話は聞こえない。戦いの最中で何やら話しているデクと焦凍くん。今まで使ってこなかった左側の炎を使い、結果は焦凍くんの勝利となった。いくらリカバリーガールがいるからと言ってデクのあの怪我は無茶しすぎだ。
今すぐにでもデクの元へ行きたいが、次の試合がもうすぐ始まる。急いでフィールドに行き、次の対戦相手である塩崎さんと対峙する。
«さぁてお次は!女同士の戦いだァ!!»
言われてみれば確かにそうだ。目の前に立つ茨の髪を持つ塩崎さん。雰囲気は百ちゃんと似ている気がする。さっきの上鳴くんとの試合からして、かなり強力な個性を持っている。でも、ツルなら空に回避してしまえば届かないはず。
«スタァーーーット!!»
まずは空中回避をしようと翼を出す。強く地を蹴り距離を取ろうとすると、地中から無数のツルが出てきてグルグルと翼に巻きついた。
「そう来ると思いました。翼を捕まえてしまえば、こちらのものです」
胸の前で手を組む塩崎さんは、まるで何かを拝んでいるようだった。このまま場外へ持っていくつもりなのか、素早くツルが蠢いている。
『甘いっ!』
翼を1度背中に戻して再び翼を出す。今のが焦凍くんの氷だったら無理だけど、拘束されてるだけなら大きさを変えて脱出することは容易い。ツルが四肢を拘束していたら話は別だが、どうやら塩崎さんは翼のことしか見ていなかったらしい。
高く飛んで上空から羽を投げ飛ばす。塩崎さんは咄嗟にツルを出したけど、それよりも強度の高い羽がツルの壁を切り崩した。
『ごめんっ!』
「ぐっ!!」
防御を崩され焦った顔の塩崎さんと目が合う。翼を切って一気に接近し、勢いをつけて回し蹴りをする。女の子相手に申し訳ないけど、私も女の子だから許してね。
«こいつぁモロに入ったァ!!あんな見た目だけど、意外と武闘派かあ!?»
肉弾戦は私が最も苦手とするもの。個性を使えば間接的に攻撃することはできるが、接近戦だと逆に不利になることが多い。だからこの2週間、パパとみっちり接近戦の訓練をしたのだ。パパのお墨付きだから塩崎さんには申し訳ないけど、相当威力はあるはずだ。
「塩崎さん戦闘不能。準決勝進出、さん!!」