第2章 ラストJC
そして時は流れ、季節は冬。
常並高校の受験を終えた私は、まだ結果が出た訳でもないのにとてつもない解放感に浸っていた。デクとかっちゃんの入試日は1週間後に控えている。自分が受ける訳でもないのに、何故かドキドキしてしまう。
そんなことを考えながら、日課である翼の手入れをしていると、お母さんがノックもせずに部屋のドアを開けた。
「入るわよ〜って、暑いわねこの部屋!冬だからって暖房入れすぎは体に悪いのよ。ほら窓開けて換気換気!」
『え〜。さーむーいー』
「少しだけでいいから我慢なさい。洗濯物ここに置いておくわよ」
『ふぁーい』
外の風は意外にも強く吹いていて、少しだけしか窓を開けてないのに、パタパタとカーテンが揺れている。かなり寒いが少しだけなら我慢しようと、そのまま翼の手入れを再開する。いつもはカーテンを閉めての手入れだが、風に靡いたカーテンが少しずつ開いていく。窓に背を向けていた私は、外からこちらを見ている視線に気付きもしなかった。
「はあ〜学級委員長だからってなんでも雑務押し付けていいなんてひでえよな」
『私はこういう作業結構好きだからあんまり苦じゃないかな〜』
「まじで?ってすげぇな」
放課後。学級委員長である私たちは、先生に頼まれて資料のホチキス留めを手伝っていた。学級委員長だなんて柄ではないが、高校進学の内申のために、立候補者したのだ。同じことを考える人は他にもいたが、数多くの立候補者の中からジャンケンで勝ち取ったのだ。彼も同じくジャンケンで勝ち取った強運仲間である。
2人でもくもくとホチキスを留めていく。資料プリントを机で整えるトントンという音と、パチンパチンというホチキスの音が教室内に響く。あっという間に終わり時計を見ると、思っていたより時間がかかっていたようだ。
『わっ、もうこんな時間!』
「意外とかかったな。んじゃ、俺これ先生に出してくるから、先帰っていいぜ」
『任せていい?ありがとう、じゃあね』
「おう、じゃあな」
校舎を出た頃には既に太陽が傾いていて、昼間と比べてだいぶ気温が低くなっている。ひんやりとした空気に肌を刺されながら、早く帰ってココアでも飲もうとその足を早める。