第2章 ラストJC
家に着く頃には太陽もすっかり沈んでいた。人通りの少ない道を曲がり、早く入れるように家の鍵をスタンバイする。すぐ隣にあるかっちゃんの家の灯りはまだついていない。
視線を戻して家に入ろうとすると、玄関が少しだけ開いていた。せっかくスタンバイした鍵は意味を成さなくなった。にしても不用心すぎる。
『ただいま〜。ちょっと、玄関開いてたよ!』
玄関を閉めて内側から鍵をかけようとすると、鍵の部分が壊れていた。壊れているというより、ボロボロと崩れたような感じだ。靴を脱ぎながらお父さんとお母さんの靴があることを確認する。そういえば今日は2人とも帰りが早いと言っていた。でも、それにしては部屋の中が暗い。
『お父さん?お母さん?』
リュックを下ろしてリビングへ向かう。人影が見えたが暗くてよく見えない。なんで電気を消しているんだと心の中で思いながら、パチンと電気をつける。
『ちょっと玄関の鍵が………』
「…ああ、やっと帰ってきたか。君のことを待っていた」
ドサリと手に持っていたリュックが落ちる。目の前に広がる光景があまりにも悲惨すぎて状況が読み込めない。まず、そこに倒れているのは誰?床に広がっている赤いものは何?顔や体に手首を付けているあの男は誰?
『…あっ……うぅ…』
恐怖と混乱でうまく呼吸ができない。ただ分かっているのは目の前にいるこの男は危険だということだけ。ゆっくりと近付いてくる男と距離を縮めないように、言うことを聞かない足を動かして後ろへ下がる。
「そんなに怖がらないでよ。君のことは殺さないからさ」
君のことは?は、ってことはあそこに倒れている人を殺したということ?
なんとかしなきゃと必死に考えていると、無意識に個性を出していた。撃退しようなんてことは思いつかなくて、ただ自分の身を守らないとと思った私は、自身が隠れるように大きな翼に身を包んだ。
「…っ、はははっ!情報は本当だったか!いいね、君…」
どうしよう。どうしたらいい。羽の隙間から男がこちらに手を伸ばしているのが見える。何かしらの個性の持ち主なら、触れられるのは回避した方がいい。それなら、と翼を広げて大きく一振するば、風と共に鋭い無数の羽が男の体を掠める。
「……痛いなあ。なにするんだよっ!!」