第10章 100%で望む理由
「……くん。取り除いてもらうのはありがたいが、あまり触られると」
『うえっ!?あ、ご、ごめん!なんか無意識に!』
ごほんと咳をする飯田くん。友達のふくらはぎに興味を持って触っているなんて、私変態ではないか。
お茶子ちゃんと勝己の試合も見るために、ペースを上げて羽を取り除いていく。全ての羽を取り終えると、飯田くんがすっと席を立った。
『全部取れたよ』
「おお、ありがとうくん」
『いや~もともと私が詰まらせたわけだし』
「それはそうだが…なにがともあれ、2回戦進出おめでとう!俺の分も頑張ってくれると嬉しい」
『うん!もちろんだよ!』
「それと……君の個性はとても美しいんだな。戦闘中とは言えつい見とれてしまった」
多分、飯田くん自身はそんなに深い意味もなく言ってるんだろうけど、こんなに直接的に言われたことがなくてなんだか照れてしまう。普段はあまりお目にかかれない飯田くんの優しい微笑みに目を奪われる。飯田くんもこんな顔をするんだ。
「おっと、こうしている間にも次の試合が始まるな。俺たちも急ごう」
『あ、うん!』
先生たちに見つかったら怒られるだろうけど、飯田くんと一緒に全力で廊下を走る。もちろん個性は使わずに。これがいつも通りの学校だったら飯田くんも、廊下を走るなんてやめたまえ、なんて言いそうだけど、今日はいいよね。
クラスの観客席に戻る。おめでとうとか、お疲れ様とか、そんな言葉を受け取り席につく。なんとか始まる前には戻ってこれた。と安心していたら開始の合図がなった。
「麗日さん…行動不能。2回戦進出爆豪くん!」
それは、お茶子ちゃんの強い意志が現れた戦いでもあった。
腕相撲勝負による、2回戦進出への切符を勝ち取ったのは切島くんだった。さすがというか、セメントス先生が使った腕相撲の台もヒビが入ってるなんてすごいな。
次の試合はデクと焦凍くん。もし次の試合で勝てば、私はこの試合の勝者と戦うことになる。見逃すわけにはいかない。
「2人まだ始まっとらん?」
『お茶子ちゃ…』
「目を潰されたのか!早くリカバリーガールの元へ!!」
「行ったよ。これはアレ、違う」
それ以上は聞くまいと口を噤む。お茶子ちゃんが席に座ると同時に試合が始まった。