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君の涙【ヒロアカ】

第10章 100%で望む理由



 羽がほぼ舞い降り視界が晴れてくると、目の前に翼を広げてにっこりと笑うくんがいた。それはこの状況にふさわしくないほど美しい光景だった。思わず目を奪われ、動きが止まる。

 『…ごめんね、飯田くん』

 くんの台詞に我に返り、エンジンをつけて突進しようとした時、ふくらはぎからプスプスと嫌な音が聞こえた。排気筒に羽が詰まっていたのだ。さっきの羽で目くらましをし、その間に羽を飛ばして詰まらせたのか。

 『飯田くんすごい速いから…逃げながら羽をばらまいて、視界を悪くして、動きが鈍くなってからマフラーを詰めちゃえって思って!』

 排気筒をやられ動揺する俺を見て、くんは翼を広げた。大きく広げられたそれが一振りされると、まるで竜巻のような風が起きて、体が宙を舞った。

 「飯田くん場外!2回戦進出さん!!」


 『飯田くんごめん、それ取れる?』
 「問題ないさ」

 試合が終わり控え室に戻る。本当は戦う相手と別々の控え室が用意されている。せめて羽を取らせてもらおうと、飯田くんの控え室へお邪魔させてもらうことにした。勝つためとはいえ飯田くんには申し訳ないことをしてしまった。

 「お疲れ様。飯田くん、ちゃん」
 『あ、お茶子ちゃん』
 「お、うらら…かじゃないな、シワシワだぞ眉間!!」
 「みけん?あーちょっとね、緊張がね。眉間にきてたね」

 そっか。お茶子ちゃんの対戦相手は勝己だ。相手が女子だからって手加減とかしないだろう。
 お茶子ちゃんの個性で勝己に勝てる方法を考えてきたと、デクが控え室に入ってくる。それを書いたノートをお茶子ちゃんに見せるが、お茶子ちゃんはそれを断った。

 「決勝で会おうぜ!」

 震える手に力を入れてぐっと親指を立てるお茶子ちゃん。同じように親指を立てれば、お茶子ちゃんはニッコリ笑って控え室を出ていった。デクも先に観客席に戻っていき、控え室には飯田くんと二人きりになる。

 『これって痛い?』
 「痛くはないが、足を動かす時に違和感はあるな」
 『そうなんだ~』

 飯田くんに座ってもらい私が羽をとる。ふくらはぎについた排気筒をまじまじ見ながら羽を取り除いていく。飯田くんの個性はなんだかすごい。無意識に排気筒に手を触れる。

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