第9章 目指せ頂点
炎の防御を崩し、再び手を伸ばす。デクの右手にはしっかりとハチマキが握られていた。でも待って、そのハチマキ…
『デク!それ違う!!』
1番上にあるのが取られたハチマキだと誰もが思うはず。それを読んで、ハチマキの位置を変えていたらしい。
残り時間は10秒を切った。ギリギリでも取り返せる。再び轟チームに向き合い、それを取り返そうとデクが手を伸ばす。氷壁の中に飛び込んできたかっちゃんとデクが手を伸ばす。あと1秒──
« タイムアップ!»
負け、た。あのもう少しだったのに。騎手を下ろしなんとも言えない沈黙が流れる。そんな雰囲気とは裏腹にプレゼントマイクの声はいつも通りだ。
「あの…ごめん、本当に…」
『デク…』
「あ、デクくん!ちゃん!」
ワサワサと人差し指を動かして常闇くんを指すお茶子ちゃん。常闇くんの方を向くと、彼の後からゆっくりと姿を現すダークシャドウ。彼の個性であるダークシャドウが咥えているものを見て、思わずダークシャドウに力いっぱい抱きつく。
«4位緑谷チーム!! »
デクが追い込み作り出した焦凍くんの隙をついて、ダークシャドウがハチマキをとっていたらしい。お茶子ちゃんと一緒にたくさんダークシャドウを愛でる。可愛いし、強いし、最高すぎる。デクはまた大量の涙を噴出して膝から崩れ落ちている。これで最終種目進出メンバーが決まった。
ここで一旦昼休憩を挟む。先程までの緊張が解け、会場内は賑やかな声で溢れ返っている。食堂や屋台を利用する人がゾロゾロと会場から出ていった。
「ちゃん、一緒に食べましょう」
『いいの?梅雨ちゃん!』
「ええもちろんよ。一緒に食べる方が楽しいもの」
『じゃあお言葉に甘えて~』
梅雨ちゃんや三奈ちゃんたちと一緒に食堂でランチタイムを満喫する。参加種目の感想とか、最終種目はなんだろうとか、そんな話をしていると、あっという間に時間が過ぎていった。
そういえば、デクとかっちゃんと焦凍くんの姿が見えない。屋台で昼食を済ませているのかな。そんなことを考えていると、何故か百ちゃんにチアリーダーの服を渡された。
『……なにこれ?』
「午後はこれを着て応援合戦らしいですわ。相澤先生からの言伝だと、峰田さんと上鳴さんから聞きましたの」
『そ、そうなんだ』