第9章 目指せ頂点
今年の1年生の主審を務めるのは、18禁ヒーロー、ミッドナイトだ。スタイル抜群の妖艶なお姉様で、なかなか過激な格好をしていらっしゃる。
雄英高校はなんでも早速本題に入るのが好きで、校長先生の挨拶とか、そういう堅苦しいものをすっ飛ばして選手宣誓から始まった。なんと宣誓するのは入試一位通過のかっちゃんだ。両手をポケットに入れたまダルそうに前へ出る。かっちゃん、宣誓とかちゃんと言えるのかな。
「せんせー。俺が1位になる」
さすがかっちゃん、ある意味期待通りだ。周りからは案の定ブーイングが出て、それでもなおかっちゃんはみんなに挑発をしている。でも、以前のかっちゃんなら今みたいなのを笑いながら言うはず。みんなの前でいうことで、有言実行させようとしているんだ。
「さーて、それじゃあ早速第一種目行きましょう」
「雄英ってなんでも早速だね」
『面倒くさいことは全部はしょるよね』
「せやね」
前方の大型スクリーンに映し出されたのは、障害物競走の文字だった。全クラスでの総当りレース。スタジアムの外周コースさえ守れば何をしてもいいらしい。香山先生が話をしている間に重々しく開いていくスタートゲート。みんなぞろぞろと前の方へ行く。
ああ、緊張してきた。でも大丈夫。この2週間無駄に過ごしてきたわけじゃない。体操服を脱ぎ上はタンクトップ姿になる。恥ずかしくないわけないが、私だって本気なんだ。
「スタート!!」
合図と同時にみんな一斉にゲートへ流れていく。思ったよりも幅が狭くて、いつぞやの食堂を思い出す。ここが既に最初のふるいなんだ。
前方から悲鳴が聞こえてくる。ほんのり冷気を感じたので、力強く地を蹴り個性を発動する。やっぱり先頭を行く焦凍くんが、地面を凍らしていた。
Aクラスのみんなは焦凍くんの動きを読んでいて、ほとんどが個性を駆使して回避している。翼を羽ばたかせて前の方へ行き、ゲートを抜けて道が拓けたところで着地する。
« さぁいきなり障害物だ!まずは手始め…第一関門ロボ・インフェルノ!! »
元気な山田先生の声が会場に響く。一般入試用の仮想敵。前にかっちゃんが話していたやつだ。話には聞いていたけど、実際に目の前にするとその大きさに圧倒してしまう。
先頭を走る焦凍くんが右手を大きく振り上げる。その一瞬で大きな仮想敵が凍てついてしまった。