第8章 つかの間の休息
仮眠室なんて初めて入る。少しドキドキしながら中へ入ると、熱いお茶を入れているトゥルーフォームのパパがいた。
「2人とも来たか。さあ、ご飯を食べよう」
『全く、お弁当忘れるなんて。渡せなかったらどうしようってヒヤヒヤしたんだから』
「いやあ~すまんすまん」
「オールマイトにタメ口っ!」
私とパパのやり取りを見て1人焦るデク。確かに、NO.1ヒーローとただの小娘が、こんな風に話す光景は少し異様なのかもしれない。
3人でお昼を食べ終えて、パパが入れてくれたお茶を啜る。パパがデクと私を呼んだ理由は、案の定体育祭のことについてだった。
まず、次世代のオールマイトであるデクが来たということを、世の中に知らしめてほしい、とパパは言った。つまりは、全国が注目している体育祭で、全力でアピールして欲しいということだ。
一通りデクに話すと、パパは次に私の方へ話題を振った。内容はデクと逆のものだった。
「は体育祭どうする?」
『どうする…とは?』
「全国のトップヒーローが注目する分、マスコミも取材しに大勢来るんだ」
「…そうか。そうなると、不特定多数の敵にの個性が知れ渡ってしまう」
『敵に……』
2人の言葉で頭によぎるのは、敵に襲われた光景。半年ほど前の事件と、つい最近の襲撃。自身の安全と鑑みるなら、もちろん個性を使わずに参加するか、棄権するか、どちらかの選択肢を選ぶことになる。
プロは常に命懸け。いつかパパが言っていた言葉を思い出す。そうだ。私もヒーローになるんだ。パパのような素敵なヒーローに。自分の安全を優先していたらヒーローになんてなれっこない。さらに向こうへ進むなら、答えはもう決まっている。
『体育祭に出るよ。もちろん、個性を使って』
「全国の敵にも個性が知られても、か?」
『また襲われるかもしれないけど、私はずっと助けてもらってばかりだったから。私はヒーローになるんだ。人を助けるならまずは自分のことを守れるようにならないと!もう、敵を恐れて隠れたりしない』
どこか無意識に甘えていたんだ。パパがいる、かっちゃんが守ってくれるって。だから私はこのままでいいんだと。でもそれじゃ、何も変わらない。何のために雄英に来たんだ。
『パパ、体育祭までの2週間、特訓してほしい!!』