第8章 つかの間の休息
「体育祭は2週間後だ。それまでに各自鍛えておけよ。話は以上だ……」
『え?…は、い!』
「話がある。ついてこい」
教室を出ていった相澤先生を追って廊下を走る。話とは一体なんだろうか。無言で歩き続ける相澤先生を追いかけて、たどり着いたのは保健室だった。保健室の前で相澤先生がこちらを振り返る。
「………開けろ」
『あ、はい!』
そうか、先生は今手が動かせないんだ。言われた通り保健室のドアを開けると、中にはリカバリーガール以外に誰もいなかった。
「おや、あんたは…」
『1年Aクラスのです。先日はありがとうございました』
お礼を言うとリカバリーガールはニッコリと笑った。用意してくれた椅子に座り、相澤先生は空いてるベッドに腰掛けた。
「……話は聞いた。、お前俺のこと助けたんだってな」
『助けたというか…そんな大袈裟なことはしてません』
「でも実際、あんたが個性を使ってなけりゃ、ここまで回復するのは不可能だったさね」
「そういうことだ……以前、俺はお前にヒーローになる見込みゼロだと言ったな…悪かった。俺の見込み違いだったようだ。人を救わんと個性を使ったお前はいいヒーローになる」
『……っ、あ、ありがとうございますっ!』
最近涙腺がおかしい。くぅーっとこみ上げてくるものをなんとか抑えて、深々と頭を下げる。頭上から楽しそうなリカバリーガールの笑い声が聞こえた。今相澤先生はどんな顔をしているのだろう。
相澤先生はそのまま保健室で休むらしく、1人保健室を後にした私は急いで教室へと戻った。先生に呼び出されたとはいえ、もう1限目が始まっているのだ。恐る恐る教室の扉を開けると既に英語の授業が始まっていた。
1限目が終わりお茶を飲もうとリュックを開ける。その中にお弁当箱が2つ入っていて、パパがお弁当を忘れて行ったことを思い出す。包みが同じなので2つのお弁当箱を机の上に出して、両方を持ち上げ重さを比べる。うん、こっちがパパのお弁当だ。
それにしても困ったぞ。朝のうちにパパに渡すつもりだったのに。学校ではオールマイトと一緒に暮らしていることは伏せているから、みんなにバレないように渡さなければならない。
よし、と覚悟を決めてうさぎ柄の包みを抱え込む。