第8章 つかの間の休息
教室に入ると一斉にみんなの視線がこちらに向いた。
「ちゃん、大丈夫だった?」
「もう平気なの?」
「ケロ…心配したのよ」
みんなに気圧されて後退りをする。透ちゃん、三奈ちゃん、梅雨ちゃんが順に口を開く。これほど心配してくれるなんて、みんな優しい。
『もう大丈夫、この通り元気だよ!』
安心させるようにニコッと笑い、元気だということが伝わるように力こぶしを作る。それを聞いたみんなは自分の席に戻っていく。私も自分の席に着こうと歩くと、ガシッと右腕を掴まれる。犯人はかっちゃんだ。かっちゃんは前を向いたままボソリと呟いた。
「……平気、なのかよ」
かっちゃんが私のことを心配してくれてるだなんて。今日は爆弾でも降るのだろうか。大丈夫だよ、ありがとうというと、そうかと言ってゆっくりその手が離された。
「おはようございますさん」
「おはよう」
『百ちゃん、轟くんおはよう』
「心配しましたのよ。急に倒れたって聞いたから」
『あはは~ありがとう!』
「轟さんが運んできた時、それはもうびっくりしましたわ」
『え?』
思わず轟くんを見ると、ふいっと目を逸らされてしまった。百ちゃんが嘘をついているようには見えない。全然知らなかった。またもや私は轟くんにご迷惑を…
『あの、轟く──』
「迷惑だなんて思ってねーから。謝ったりすんなよ」
『……あ、はい。あの…ありがとう』
「おう」
素直にお礼を言うと轟くんは満足そうに笑って前を向いた。百ちゃんは口元に手を当てて、まあ、と言って笑っている。
「お早う」
「相澤先生復帰早ぇえええ!!」
ヨロヨロフラフラと教壇に立つ相澤先生。歩けるまでには回復したらしいけど、顔も腕も包帯だらけで先生の肌が全く見えない。今にも倒れそうだけど、大丈夫なんだろうか。
「俺の安否はどうでもいい。何よりまだ戦いは終わってねえ」
「戦い?」
「まさか…」
「まだ敵がー!?」
「雄英体育祭が迫ってる!」
相澤先生はもっとこう…普通に言うことは出来ないんだろうか。また敵が現れたのかと思ってひやひやしてしまった。先生のいう戦いとは、かつてのオリンピックに代わるビッグイベント─雄英体育祭だ。全国のトップヒーローがスカウト目的で集まってくる。