第7章 己の力を人命の為に
視線を相澤先生に戻す。衣服が邪魔だ。震える手で相澤先生の服をビリビリと破っていく。
「っ!?」
「峰田ちゃん、変な事考えるのやめてちょうだい」
特に重症なのは腕と顔。足は今のところ目立った怪我はない。
ゆっくり瞼を閉じる。パパの言っていたことが本当なら、私の涙で治癒することが出来る。手遅れになる前に私が何とかしなきゃ。
どうしたら泣くことが出来る。悲しいことを考える?怖いものを考える?記憶の中でできるだけ色んなことを考えたり思い出したりしてみたけど、焦りと緊張が邪魔をして涙が出てこない。
「ちゃん?」
目を開いて相澤先生を見る。私たちを守るために自分を犠牲にしてここまで戦ってくれた先生。きっと相澤先生がいなければ、私たちはあっという間に全滅していただろう。
相澤先生を助けたい。私が相澤先生を───
ポロリと何かが頬を濡らした。手で触ってみるとそこは確かに濡れていた。涙が出たのだ。涙で濡れた手で、そっと相澤先生の腕に触れる。すると、シューっと音がして傷が先程より浅くなっていた。
「ケロっ!?」
「えっ…え!?」
自然とどんどん溢れ出てくる涙を手で拭い、先生の腕や顔に手を当てる。一滴も無駄にはできない。なるべく地に落ちないように注意する。
「すごいわ…ちゃん」
「飛べるだけじゃなかったのか!?すごすぎんだろっ!」
あれ。梅雨ちゃんと峰田くんの声がどんどん離れていく。
体が熱い。頭が割れるように痛い。相澤先生の姿がだんだんぼやけてきて、視界がゆっくりと暗闇に包まれた。
教師たちが応援に駆けつけてきて、敵たちは勝ち目がないと判断し逃げていった。安否を確認するためにゲート前に集まるようにと言われ、指示に従って入口へと向かう。
「ちゃん!?」
「おい、!しっかりしろよー!!」
途中での名前が聞こえてきて、何事かと思い駆け寄ると、ぐったりとして倒れているがいた。近くには相澤先生もいる。
「おい!一体何があった?」
「轟ちゃん!わからないわ…相澤先生を治癒してたら急に倒れたの」
「くそっ…!!」