第7章 己の力を人命の為に
見た所外傷はない。敵にやられた訳では無いそうだ。相澤先生を2人に頼み、俺はを横抱きにして抱える。ずいぶんと体が熱い。また高熱か?右手で冷やしながらも、一向に熱が引く様子はない。
急いでゲート前へ運ぼうとするが、の負担になってしまうのは避けたい。なるべく振動させないようにその足を早める。
「っ、!?おいかっ!!?」
ゲートへ向かう途中、爆豪がを見つけて、ものすごい勢いで近づいてくる。大声を出す爆豪に苛立ちを覚える。
「てめぇ、になにした!?」
「俺じゃねえ…倒れてたんだ。の体に響く。大きな声を出すな」
「ちっ、変われっ!俺がを運ぶっ!!」
「…もっと、のことを考えろよ。すげぇ高熱なんだぞ。俺が冷やしながら運ぶ方がいい。早く運ばねえといけねえのに、自分のことだけ考えてんじゃねえ」
「……クソっ!早くしろよっ!」
言われなくてもわかっている。舌打ちをした爆豪は、それでも俺が抱えるをずっと見ながらついてきた。ゲート前には教師陣や他の奴らが既にいて、俺の腕の中のを見て驚いている。
急いで学校へ搬送するため先生にを渡す。が高熱で倒れたのは初めての事じゃない。これは偶然か?それにしては…
『………ふぁ~…あり?』
大きな欠伸をしながら数回瞬きをする。なんだか変な匂いがする。家のベッドと違う感じ。よいしょと体を起こすと、隣にはデクとパパが寝ていた。
「おお!」
「良かった~」
『えっと、ここは…?』
「やっと気がついたかい…ここは保健室だよ。気分はどうだい?」
『あ、はい。元気です』
「ひどい高熱でうなされてたんだよ」
確か訓練中に敵が現れて、敵と戦ってパパが来て、相澤先生を治癒していて…そこからの記憶が無い。最近気を失うことが多いな。
『敵連合はどうなったんですか?』
「逃げていったよ。全員無事だ。相澤先生も13号先生も命に別状はない」
『はぁ~』
パパの言葉にひどく安心し、体から力が抜けてベッドに体を沈める。目を閉じると睡魔に襲われて、抗うことが出来ずにまた意識を手放した。