第7章 己の力を人命の為に
「そんじゃあまずは……」
いよいよ始まるのかと思ったその矢先、中央に設置されている噴水の広場に黒い渦が現れた。中から現れた姿を見て呼吸を忘れる。忘れもしない、半年前の…
『っ!』
「ひとかたまりになって動くな!」
「どこだよ…せっかくこんなに大衆引き連れてきたのにさ…オールマイト…平和の象徴…いないなんて…子どもを殺せば来るのかな?……ああでも、もうひとつの目的は達成できそうだ…」
「あいつはっ……っ!」
指の間から覗く赤い瞳が私を捉えた。恐怖でジリっと後退りをする。男の姿を捉えたデクは咄嗟に私の前に出て、まるで私を隠すように立ってくれた。
なぜ敵がこんなにもあっさり学校に入れたのだろう。センサーが反応しないということは、そういうことが出来る個性を持つ敵がいるということ。
「バカだがアホじゃねぇ。これは何らかの目的があって用意周到に画策された奇襲だ」
轟くんの言葉に息を呑む。目的はパパと私…学校は敵も入らないし安全だと思っていたのに。
相澤先生が13号先生や上鳴くんに指示を出し、敵の懐に突っ込んでいった。いくら個性を消す個性だと言っても、あれだけの敵の数を相澤先生1人で対応するなんて無茶だ。そう思ったが、先生もプロヒーロー。あっという間に敵を蹴散らしていく。今のうちに避難をしようと出口へ向かう。
「させませんよ」
先生の瞬きのほんの僅かな隙に、黒い靄のような敵が私たちの目の前に立ちはだかる。
「初めまして、我々は敵連合。せんえつながら…この度ヒーローの巣窟、雄英高校に入らせて頂いたのは、平和の象徴、オールマイトに息絶えて頂きたいのと、翼を持つ少女を強奪したいと思ってのことでして」
丁寧な口調で物騒なことを話す敵。ゆらりと黒い影が揺れる。その瞬間、かっちゃんと切島くんが攻撃に出た。
「危ない危ない…そう、生徒といえど優秀な金の卵」
「ダメだ、どきなさい2人とも!」
刹那、黒い影が大きく広がり私たちを包み込んだ。避けられない。そう思い目をつぶるとぐいっと誰かに腕を掴まれた。次の瞬間、私たちは水の中にいた。腕を掴んでいたのはデクだった。酸素を求めて上へ泳ごうとすると、近くに魚のような敵がいた。対応に遅れる。2人で身構えていると、横から梅雨ちゃんが現れた。
「ちゃん、緑谷ちゃん」