第7章 己の力を人命の為に
「ちっ、ちげぇからな!あんなデタラメ信じるんじゃねぇぞっ!」
『わかってますー』
「おいっ!ちゃんと聞いてんのかっ!?」
『うわっ、わ、わかってるってばっ!!』
適当に返事をするとぐわんぐわんと容赦なく肩を揺さぶられる。かっちゃんに言われなくても梅雨ちゃんの勘違いなんてことはわかっている。そこまで必死にならなくてもいいのに、余程かっちゃんは嫌だったらしい。
「あの様子見てっと、あの2人が付き合ってんのって俺らの勘違いじゃね?」
ケラケラと笑いながら言ったのは上鳴くんだった。なんという勘違い。俺らってことはほかの人もそう勘違いしていたってことなのだろうか。
「えええっ!?かっちゃんと、が!?」
「緑谷ちゃんは何も思わなかったの?」
「確かに…2人は仲がいいけど……僕は知らなかった…」
「いや、だから俺らの勘違いだって」
「なんかそうっぽいね~」
「そ、そうなんだ…」
デクが知らないのもそのはずだ。だってそれはみんなの勘違いなのだから。なぜそうなったのかは分からないが、私とかっちゃんが付き合ってるだなんて…すごい勘違いをされたもんだ。
それこそ全力で否定するのかと思いきや、かっちゃんは黙って外の景色を眺めているだけだった。聞こえてないはずはないのだか。ちらりと横を見ると、轟くんもなにか難しそうな顔をしている。何を考えているんだろう。
かっちゃんが梅雨ちゃんや上鳴くんにいじられていると、あっという間に演習場へと到着した。まるでどこかのテーマパークのような造りに感動していると、スペースヒーロー13号がこの施設の説明をしてくれた。
それにしてもパパはどこにいるんだろう。確かに3人体制で見るって相澤先生は話していたのに。先生達の方を見ると、なにやら小声で話していて、13号先生の指が3を示している。話の内容は聞こえないが、話している内容はなんとなくわかった気がした。
始める前に13号先生からお小言を頂く。個性は強力であるからこそ、人を救う力があり、そして殺める力もある。一歩間違えれば容易に人を殺せる。先生の話を聞きながら頭の中に浮かんだのは、半年前の事件の風景だった。
「君たちの力は人を傷つけるためにあるのではない。助けるためにあるのだと心得て帰ってくださいな」
13号先生の言葉が胸に響いた。