第7章 己の力を人命の為に
ギロりと睨んだあと盛大な舌打ちをして、渋々前の席に座る。今にも個性を使いそうな雰囲気だったが、落ち着いてくれたみたいで良かった。今ここで爆破されたら、まさにバスガス爆発だ。
『轟くん、何か考えた?』
「ああ…いや、まだ」
『そっか~。なんでもいいから遠慮なく言ってね。それにしてもこの前は本当に助かったよ』
「俺はひやひやした」
『家にもお邪魔しちゃって──』
「あ゛あ゛っ!?」
突然後ろを振り向いたかっちゃん。いつもに増して恐ろしい形相だ。軽くホラーだ。急に大声を上げて怖い顔をしたかっちゃんを見て、びっくりしないではいられない。
『ど、どうしたの。かっちゃん』
「……おい…今のなんだ…聞き間違いじゃ済まさねぇぞ……」
「聞き間違いじゃねえよ」
「っ、ふざけんなっ!!」
『ちょちょちょっ!』
席を乗り出して轟くんに突っかかろうとするかっちゃん。必死にそれを阻止しようと手を伸ばすが、かっちゃんの腕力担うはずもなく。私の頭を抑えて思いっきり下に押さえられる。
『ぐへっ!』
「はすっこんでろ!」
「随分と余裕がねぇんだな」
「んだと、コラァっ!!」
ついにかっちゃんが轟くんの胸ぐらを掴んだ。相反して轟くんはとても落ち着いていて、冷めた目でかっちゃんを睨み返す。
「今からでもバス降りるか?」
相澤先生の一言により、かっちゃんは轟くんの胸ぐらを乱暴に離した。かっちゃんの隣に座る響香ちゃんが呆れたようにため息をつき、これ以上巻き込まれないように音楽を聴き始めた。正しい判断だと思うよ、響香ちゃん。
『……なんか、ごめんね』
「は悪かねぇよ」
轟くんはそう言って頭をポンと撫でてくれたけど、前の席からは永遠に舌打ちが聞こえる。私の命日もそろそろ近いんじゃないだろうか。
「私思ったことをなんでも言っちゃうの。爆豪ちゃん、ちゃんのことが好きなのね」
「っんだとコラそんなわけねぇだろ誰がこんなクソ女のこと好きになるかてめぇふざけんなブッ殺すぞっ!!!」
「…ケロ」
ノンブレスで言い切ったかっちゃん。いや、知ってるけど流石にそこまでドストレートに言われら私だって傷つく。ガバッと振り返ったかっちゃんは、それはもうすごい勢いで梅雨ちゃんが言ったことを否定してきた。