第6章 多を牽引する者
屋外へ避難してくださいというアナウンスにより、食堂にいた人たちが一気に混乱に陥いった。誰かが校舎内に侵入してきたらしい。状況が掴めないままオロオロしていると、次々に人がぶつかってきて、一気に人混みの中に押し込められてしまった。
「、だ、大丈夫?」
『デ、デク…うん。なんとか、う、わあああっ!』
「くんっ!」
人波に押されて揉まれて…すっかりデク達とはぐれてしまった。ギュウギュウに押しつぶされ息が苦しくなる。力強く背中を押され前に傾きバランスを崩す。
「っと…っ!?大丈夫か?」
『き、切島く、ん?』
肩を支えてくれたのは切島くんだった。おかげで倒れずに済んだ。今ここで倒れれば、みんなに踏まれてジ・エンドだ。
『ありがとう!』
「おう!…にしてもすげぇな」
『一体何が起きて…痛っ!』
「おい、押すなって!ちょ…、俺に掴まれ」
『う、うん』
肩やお腹に容赦なく誰かの体が当たる。ここは切島くんのお言葉に甘えて掴まらせてもらおう。出された腕に捕まろうとするが、そのままグイグイと押されて、切島くんに抱きつくような体制になってしまった。
『わ、わっ!』
「えっ!ちょ、っ!?それはさすがに大胆すぎだろっ!!」
『ご、ごめん。切島くん!』
そう言いつつも私が倒れないようにしっかり背中に手を回してくれる切島くん。やっぱり男の子の力は全然違う。
「皆さんストップ!ゆっくり!ゆっくり!!」
「んだコレ」
切島くんがみんなを落ち着かせようとしても、その声はみんなの耳に入らない。どうしたらこの状況を打開できるんだろう。
人混みに流されないように必死に切島くんにしがみついていると、ふわっとひとつの影が宙を舞った。それはお茶子ちゃんの個性によって浮いた飯田くんだった。自身の個性も使い合わせ、全員の視線が集まる場所へ移動し、面白い格好をしながら一言叫んだ。
「大丈ー夫!!!」
飯田くんの鶴の一声により、その場はなんとか収まった。少しずつ人がいなくなり、そっと切島くんから離れる。
『切島くん、本当にありがとう』
「お、おう。怪我はねえか?」
『うん、切島くんのおかげで!死ぬかと思ったけど…』