第6章 多を牽引する者
相澤先生はかっちゃんとデクに助言をした後、ちらっと私の方を見た。私もなにか助言が貰えるのかと思って期待していたが、すぐに目を逸らされてしまった。
「さてHRの本題だ…急で悪いが今日は君らに…学級委員長を決めてもらう」
その言葉にクラスのほとんどの人が、我こそはと手を挙げた。なかなか見られない光景だ。普通なら面倒くさがってやりたくない役割だが、ヒーローを目指す者となれば話は別。学級委員長は集団を導くという、ヒーローの素地を鍛えられるからだ。
「静粛にしたまえ!」
収集のつかない喧騒を破ったのは飯田くんだった。やりたいだけでは務まらない。民主主義に則り真のリーダーを投票で決めようと提案する。そう言いつつも彼の右手は真っ直ぐ上に伸びている。飯田くん、素直でよろしい。
結局投票をすることになり、白い紙を1枚ずつ渡される。誰にしよう。ちらっと周りを見るとみんなもう書き終わっているようだ。そうか、みんな自分の名前を書いているのか。私もやってみたいけど、私よりも学級委員長にふさわしい人はこの人だ。
投票の結果デクが勝ち取り、見事学級委員長に決まった。副委員長は百ちゃん。百ちゃんもデクと同じ3票だけど、残念ながらじゃんけんに負けてしまったのだ。ちなみに私が投票したのも百ちゃんだ。
かっちゃんはデクが委員長になったことに納得がいかない様子で、飯田くんは自分の名前が上がらなかったことにショックを受けている。立候補したのにデクに投票したのかな。
雄英高校の食堂を初めて利用する。今朝はギリギリまで寝ていたので、お弁当を作る時間がなかったのだ。日替わり定食を乗せたトレーを持ち、空いている席はないかと辺りを見渡す。
「おーい、ちゃん!」
「あ、お茶子ちゃん!デクに飯田くんも!」
「おお、くん。ここの席が空いているぞ」
『ありがとう~』
「が学食なんて珍しいね」
『今日はお弁当さぼり~』
デクの隣に座らせてもらいご一緒させていただく。学級委員長の話や飯田くんの家系の話をしながらご飯を食べる。飯田くんは代々ヒーロー一家で、あの有名なインゲニウムが飯田くんのお兄さんらしい。なんだか世界がとても狭く感じる。
4人で昼食を楽しんでいると、校内に警報が響き渡った。