第6章 多を牽引する者
眠い。昨日結局家に着いたのが9時過ぎ。それからご飯を食べて、パパのお説教タイムが始まった。なんとなく轟くんの名前は出さない方がいい気がして言わなかったけど、パパはしつこいくらいに看病してくれた人の名前を聞き出そうとしていた。
「爆豪少年かっ!?…いや、しかし、彼の場合、看病というものを知らなさそうだしな……」
そんなことよりお母さんとのことを報告したかったのだが、時計の針はもうすぐ12を指そうとしている。パパに平謝りし続けて長いお説教を乗り越え、お風呂に入ってベッドに入ったころには既に日付が変わっていた。
今にも落っこちそうな瞼を擦り、眠気を吹き飛ばそうと試みる。
「おはようございます。少しお時間宜しいですか?」
『ふぁあ~ぁい?』
今の大きな欠伸の終わりかけに返事をしたため、なんとも間抜けな声が出てしまった。振り向くとそこにはカメラを抱えた男性と、マイクをこちらに向けた女性がいた。テレビの取材かなにかだろうか。
「雄英の学生さんですよね?オールマイトの学校の様子を教えてくれませんか?」
『パ……オールマイトの、ですか?えっと~格好いいです!』
「格好いいとは?具体的にどんな様子なんでしょう」
『ええと…さすがオールマイトって感じ、ですかね?』
「すいません、こちらにもお願いします!」
「お嬢さん、こちらも」
「ちょっと!今は私が質問して──」
『し、失礼しますっ!!』
「あっ、待って!」
急にわらわらと取材陣が集まり、様々な形のマイクがこちらに向けられる。なんだか怖くなり、その場から逃げるように校門へ走った。おかげで目はバッチリ覚めた。
『はあ、疲れた』
「、おはよう。体調はもう平気か?」
『あ、轟くんおはよう!おかげさまで』
席に着くと轟くんの方から挨拶をしてくれた。この前とは違う、しっかり私の方を見て交わす挨拶。私のことをちゃんと認識してくれている気がして嬉しくなる。
続いて百ちゃんもやって来て挨拶を交わす。ため息をついている様子を見ると、どうやら百ちゃんも取材陣に捕まったらしい。朝から疲れたね、なんて話していると相澤先生が教室に入ってきた。
「昨日の戦闘訓練お疲れ。Vと成績見させてもらった」