第5章 夢を追う覚悟
ご飯をおかわりした私を見て、それなら私も、とパパもおかわりをする。2人でお腹がはち切れるくらいの量を食べる。多めにご飯を炊いておいて良かった。
まるでフードファイターのような食卓は、父の娘の他愛もない話で盛り上がった。教師の仕事の大変さとか、デクの戦闘服のデザインについてとか。
「ところで、」
『ん?』
「爆豪少年とはどういう関係だい?」
『ぶふぉっ!』
「うおうっ!!」
口に含んでいた米粒を撒き散らす。大変な粗相を…パパの変な質問にむせながら、布巾で米粒を回収する。
『変な言い方やめてよ。前にも言ったけど、かっちゃんはただの幼馴染だって』
「そうなのかい?それにしては随分と仲がいいように見えたが」
『そう、そうなの!最近仲直りというか、また仲良くなったの!』
「…ああ、そうなんだ」
『何よ、その憐れむような目』
「に対してじゃないよ」
『どういう意味?』
パパの謎の言葉に首を傾げる。よくわからないが、パパはそれ以上かっちゃんのことについて聞いてこなかった。
ヒーローになるということは簡単ではない。きっかけはどうであれ、ヒーローになると自分で決めたのだ。オールマイト…パパにこれだけ言ってもらったのだ。それならもう前に進むしかない。そのために…
『…パパ、明日病院行ってくる』
「っ!…会いに行くのか?」
『うん』
これは私自身のケジメでもある。ずっと会いに行こうと思っていたけど、現実から目を逸らしてずって会わなかった人物──お母さん。なんて薄情な娘なんだと世間の人は言うだろう。それでも私のことを覚えていないお母さんに会うのが怖くてここまで逃げてきた。もっと強くなるために、もっと前に進むために、お母さんに会いに行くことを決心する。
「1人で平気かい?」
『うん、平気。多分1人で行かないと意味が無いんだ』
「そうか」
自分のことを覚えていないであろう実の母に会いに行くことは、きっと計り知れないくらい怖くて不安だろう。空になったお皿をシンクへ運ぶ手が、小刻みに震えているのを見て見ぬふりをする。
の決心を踏みにじるようなことはしたくないが、精神面がとても心配だと、洗い物をする娘の姿を横目で捉えた。