第4章 形から入る人
1人ビルの奥へ進む轟くんは、壁に右手を当てた。すると轟くんの体からどんどん氷が広がっていき、すぐ足元まで近付いてきた。
「ここは任せて出ていよう」
唖然とする私の腕を、障子くんが掴んで外へ促す。あっという間にビルが氷漬けにされて、外から見ると轟くんの個性の力が一段と強力に見えた。このまま轟くんが核兵器を回収して訓練は終了になるだろう。また私は何もせずに…
『……障子くん。4階の北側に1人いるなら、そこに核兵器がある可能性が高いよね』
「そうだな。かなり高いだろう」
4階の北側。ここから直上に4階まで行けばそこに核兵器が高確率である。轟くんには悪いけど私だって何もしないわけにはない。
「それがどうし──」
翼を出すと同時に屈伸をつけて強く地を蹴る。バサリと大きく羽ばたかせれば、外から一気に4階まで飛ぶことが出来た。案の定窓の外から核兵器が目視できた。さらにその奥には足を凍らされ、身動きができない敵役のクラスメイトがいた。
大きく翼を一振させて、無数の羽を勢い良く飛ばすと、派手な音を立てて窓ガラスが割れた。その隙間をうまく通り抜け、核兵器に向けて真っ直ぐに飛ぶ。抱きつくように核兵器に張り付くと、先生の大きな声がビルの中に響いた。
「え?」
「ヒーローチーム、ウィーーーーーン!!」
『や…や…やったああああ!』
「………」
ふとすぐそこまで轟くんが来ていたことに気がつく。轟くんは急に窓の外から現れた私を見て呆然としているようだ。最後のいいところを持って行ってしまい轟くんには大変申し訳ないが、嬉しすぎて彼に向かってピースサインをする。私だってやればできる子なのだ。
個人的には兵器をタッチするという名の回収ができたので大満足なのだが、講評では百ちゃんに図星をつかれて心が折れそうになった。
まずは窓ガラスを割った時に飛ばした羽。もしあれが本物の核兵器だったら、羽が当たった衝撃で爆発していた危険性があること。これはお茶子ちゃんの時も同じことを言っていた。
次に轟くんの話を聞かなかったこと。外に出ていろと言われたのにそれを守らず、独断で行動したことだ。チームワークとしては最悪だ。