第1章 もう1人の幼馴染
『そうなんだ、倍率高いのにすごいね!私はまだはっきり決めてないけど、常並高校とかそこら辺行こうかな』
「ならどこでもすぐ受かるよ」
『そうかな?あんまり自信ないんだけど…デクが言うなら受かる気がする!』
背負っているリュックを両手で握りしめ、目を細めて笑うが眩しすぎて目が合わせられない。本当にこんな人が幼馴染だなんて、みんな羨むのも当たり前だと自分でも思う。クラスが違うから、廊下でと話しているけど、道行く人の視線が尋常じゃない。は気付いてないみたいだけど。特に男子。との会話を楽しむことで、周りからの視線を気にしないようにしよう。そう意識していたから、離れたところからかっちゃんが、それはそれはもう怖い顔で、こちらを見ていることなんて少しも気が付かなかった。
「、ばいば〜い」
『また明日ね』
眠気を誘う授業を終えて、人影もまばらな教室をあとにする。残っている人たちはまだ進路希望を決めかねて悩んでいる。受験生とはいえ、3年生はまだ始まったばっかりなのに、今すぐ進路を決めなくても…と個人的には思う。そういえば進路希望のプリントを配布された時、隣のクラスとても騒がしかったな、なんて考えていると、見慣れた後ろ姿を発見した。
『かっちゃん!』
「ああ?…なんだ、か」
『なんだとは失礼な』
「いってえな!ふざけんなっ!!」
振り返ったと同時に素っ気ない態度をされたので、チョップをお見舞すれば激怒が返ってくる。口は悪いけどこれが彼なりの表現の仕方なのだ。
『そういえばHRの時騒がしかったね』
「…別に。進路のことで没個性共が喚いてただけだ」
『ふーん。進路といえば、デクは雄英に行くらしいよ。かっちゃんも確か──』
「今あいつのことは関係ねぇだろっ!胸糞わりぃ名前出すな!!」
『………』
怒りの感情が右手のひらにボンと音を立てて現れる。急に大声を出すので周りにいた生徒達の注目を浴びることになった。
なんだか最近かっちゃんはデクの名前に敏感だ。幼少期からだんだん劣悪な方へ傾いているけど、最近は特にひどい。デクが無個性だからという理由だけではないだろう。個性だけで彼をこれほどに毛嫌いするのなら、私のことも相手にしてくれないはずだ。