第4章 形から入る人
席の列が一緒なのであまり授業中の様子は見えないが、こうやってデクとかっちゃんと同じ教室で授業を受けるのも何年ぶりだろうか。よくデクは一生懸命勉強しているなと思ったら、ヒーロー分析ノートをまとめていることがあった。相変わらず今でもそうなのかな、と考えていると、ふいに先生に当てられてしまった。
『……えっと、聞いてませんでした』
「おいおいおいおい。しっかりしてくれよ」
『はい、すみません』
熱くなった顔を教科書で隠す。絶対私に対するみんなの印象はよくわからない落ちこぼれだろう。残りの時間は、耳をすませなくても十分に聞こえる音量で話してくれる先生の話を、ものすごい集中して聞くことにした。
午後はお待ちかねのパパの授業、ヒーロー基礎学。実は楽しみすぎて15分前から着席している。一体どんな風に授業するんだろう。時計をチラチラ見ながら今か今かと待っていると、チャイムと同時に聞きなれた声が近付いてきた。
「わーたーしーがー!!普通にドアから来た!!!」
なんだあれは。地味に面白い。他のみんなはオールマイトの登場にザワついているけど、私はパパの独特な行動に心の中がザワついた。
今日の授業は戦闘訓練。個性届と要望に沿ってできた戦闘服を着用して、グラウンドβに集合することになった。
パ…先生から出席番号が書かれたケースを受け取る時、何故かバチンとウインクをされた。父と娘の秘密のアイコンタクトのような何かだと思い、ニコッと微笑み返す。しかしそれはただの勘違いで、あとからそのウインクの意味を知り、もっとちゃんと考えておくべきだったとひどく後悔した。
「あれ、ちゃんどうしたの?」
『あ、ううん!別になんでも……ってお茶子ちゃんの戦闘服、かっこいい!なんというか近未来感?あるね』
「そうかな?パツパツになっちゃって…ちょっと恥ずかしい」
えへへと照れ笑いながら笑うお茶子ちゃんが眩しく見える。女子更衣室の中で、まだ着替えていないのは私だけだった。みんなそれぞれの個性に合った戦闘服のデザインで、どれも格好よくて強そうだ。それに比べて私のは…なんというか、ただの白いミニワンピースだ。