第3章 そして、春
謝られているはずなのに、こんなにも恐怖心を持つなんて初めてだ。でもかっちゃんとのこのやり取りがとても懐かしく思えて、つい口元が緩んでしまう。
「笑うな」
『だってかっちゃんと久しぶりに話せて嬉しいんだもん』
「………けっ」
『へへへっ』
「…帰るぞ」
『あ、うん』
へらへらと笑う私の手首を強引に引っ張り、隣に歩かせるかっちゃん。一緒に帰るだなんてこれこそ何年ぶりだろうか。と言ってもすぐそこでお別れなんだけど。校門を潜りかっちゃんと向き合う。
『じゃあ私はこっちだから。また明日ね』
「あ?何言ってんだ」
『え?だから私の家はこっちで──』
「うるせえっ!送るっつってんだろうが!気付けよ、鈍感女!!」
『いや、わかんないし!』
校門の前でギャーギャー言いながら、オレンジ色の道を歩く。
帰り道、雄英の一般入試はどんな内容だったのかとか、私の個性についてとか、いろんな話をした。相変わらずデクの名前を出すとプリプリとかっちゃんは怒っていたけど、それすらもなんだか懐かしく思えてしまう。ちなみに、なんで私のことを避けたのか聞いたけど、かっちゃんは何も教えてくれなかった。
さすがに名前は伏せてるけど、オールマイトの家を知られるのはよろしくないと思い、少し離れところで別れることになった。かっちゃんは家まで送るとしつこかったが、こちとら譲るわけにはいかないのだ。かっちゃんを説得させるのはなかなか大変だった。
『じゃあここで。送ってくれてありがとう!また明日ね』
「……これから毎日だ」
『え?』
「毎日俺がお前を送る。また雑魚敵に襲われても俺がぶっ殺してやる!そうすれば俺の名が世間にすぐ届くしなっ!!ははははっ!!」
『…はあ』
「お前は黙って俺に送られてりゃあいいんだよっ!」
1人勝手に盛り上がるかっちゃんを冷めた目で見つめる。かっちゃんがいれば敵がいつ現れても心強いのは確かだけど。
『あの~拒否権は…』
「ああ?あるわけねえだろ。先に帰ったりしたら容赦しねぇからな」
『き、肝に銘じておきます』
かっちゃんと別れて1日を振り替える。とても長い一日だったけど、明日から濃い日々になりそうだ。何故かこれからずっとかっちゃんと帰ることになってしまった。なんだか疲れそうだけど、少しだけ楽しみなのは秘密だ。