第3章 そして、春
「あ…」
『……かっちゃん』
ものすごく機嫌が悪そうだ。除籍は免れたが、ある意味学校に来れなくなりそうだ。デクの顔が一気に青ざめる。飯田くんとお茶子ちゃんもかなり戸惑っている。
「…話がある」
『はい、ですよね……ごめん3人とも。また今度一緒にかえ、うわあっ』
「あ、ちゃんっ!?」
「っ、ちょっとかっちゃん!」
「女子に対してそんなふうに乱暴するのは良くないぞ!!」
グイグイとリュックを掴まれたまま、容赦なく引っ張るかっちゃん。後ろを向いたまま進んでいるので、今にも転びそうでひやひやする。不安そうな顔色を浮かべる3人を安心させるために、笑顔で手を振ったが、あんまり意味はなかった。
連れてこられたのは人気のない校舎裏。なんともかっちゃんに似合う場所だ。とても今はそんな冗談を言える雰囲気ではないんだけど。逃げられないように壁側に立たされ、無言の圧力をかけるかっちゃん。怖すぎる。
「………なんで雄英にいる」
やっぱりそこですよね。かっちゃんに話さなきゃいけないことが山ほどあるのに対して、かっちゃんも聞きたいことが山ほどあるはずだ。なぜ雄英にいるかに答えるには、まずは順を追って説明していく方が良さそうだ。
『…最初から話すね。長くなるけど、かっちゃんに聞いてほしい』
今まで無個性だと嘘をついていたこと、半年前に敵に襲われたこと、自分の個性を理解するために雄英に特別枠として入学したこと。パパの名前を伏せて、且つ、オールマイトだと特定されないように、今までの経緯をすべて話した。かっちゃんは黙って聞いていた。
『……黙っててごめん。ずっと話したかったんだけど、かっちゃん、全然こっち見てくれなくて』
本当にかっちゃんとちゃんと話すのは久しぶりだ。1年ぶりと言っても過言ではない。話すと言っても、今は私が一方的に話しているだけなので、会話としてはあんまり成り立っていないんだけど。
しばしの沈黙に気まずさを感じ、何か言った方がいいのかと考えていると、かっちゃんが口を開いた。
「……悪かった」
『……………え?』
「お前のこと避けてて悪かったって言ってんだよ!2度も言わせんなっ!!」
『や、やっぱり避けてたんだっ!』
「だから悪ぃっつってんだろうがっ!」