第3章 そして、春
結果として除籍は免れたけど、順位は21位という見事な最下位だった。先生の嘘を見抜いていた人もいたけど、私は全く気が付かなかった。除籍にならずに済んでよかったと安心する。でも、本当に個性がなければ、私には何も無いと実感せざるを得ない。
「」
『はい』
「もう気づいてると思うが、立ち幅跳びの時、個性を消させてもらった」
『…やっぱりそうだったんですね』
「個性なしの実力を知りたいってのもあったが、どうもそれ以外の素質も欠けているようだな」
『え?』
「周りのヤツらに急かされて、慌てて跳んであの結果だ。個性を知らなかったとはいえ、俺が瞬きをするまでもう少し待って落ち着いて跳べば、自分の個性を使えたのかもしれないのにな。特別枠入学だかなんだか知らねぇが、おまえは見込みゼロだ」
『………』
自分でもわかっている。図星だからこそ相澤先生の言葉が悔しくて仕方がない。うっすら浮かび上がってくる涙をジャージの袖でゴシゴシと拭う。
なんだか初日なのにどっと疲れた。制服に着替えて下校準備をしていると、人差し指にぐるぐると包帯を巻いているデクが走ってきた。
「っ!」
『あ、デク!指は平気なの?』
「うん。リカバリーガールのチ…リカバリーガールのおかげで…」
なぜ言い直したのかは分からないけど、でくの顔がげっそりしていたのであえて聞かないでおこう。
「それより、も雄英に来たんだっ!常並じゃなかったっけ?」
『うん、実はパ…オールマイトと色々あって……』
小声で経緯を話すと、デクは最後まで真剣に話を聞いてくれた。
「そんなことがあったんだ…朝見た時はびっくりしたけど、と一緒で嬉しいよ」
『私も!デクがいるだけですごい安心感ある』
「ん?君は確か最下位の…」
「はじめまして~」
「あ、飯田くん、麗日さん」
眼鏡をかけた真面目そうな男子生徒と、優しい雰囲気の女子生徒が会話に入ってくる。確かエンジンと無重力の個性の持ち主だ。です、と言えばよろしくっと返事が返ってきた。高校で初めてできた友達。なんだか嬉しい。駅まで一緒に帰ろうとお茶子ちゃんが言い出し、リュックを背負うと、後からガシッとリュックを掴まれた。