第13章 学生の本業
いた…けど、まさか寝ているとは。部屋の中にはそれはそれは気持ちよさそうに寝ている勝己の姿があった。窓から入り込む風に髪を撫でられ、小さな寝息を立てている。リュックを置いて勝己の顔をのぞき込む。
『勝己~』
「んぅ……」
トントンと肩を叩くと、一瞬眉を動かしたが、またすぐに柔らかい表情になった。どれだけ熟睡しているんだ、この人は。というか、約束していた時間に寝てるって…
『おーい』
「………」
『…かーつき!』
「………」
『かーつきさーん!』
「………」
駄目だ、起きない。あまりにも気持ちよさそうに寝ているから、なんだか起こすのも申し訳ない気持ちになってきた。まあ、教科書を渡しにきただけだから、机の上に置いて帰ろう。
『わっ!!』
立ち上がろうとした時、腕をガシッと掴まれ、バランスを崩してその場に倒れる。ものすごい力で引き寄せられ、目を開けると目の前に勝己の鎖骨があった。ギュウギュウと抱きしめられ、身動きできない状況になる。
「………」
耳元でボソリと名前を呟かれ、背中がぞわりとする。勝己に聞こえそうなほど、心音がバクバクと鳴っている。
『か、からかわないでよ』
「………」
『…勝己?……寝ぼけてる?』
返ってくるのは規則正しい寝息だけ。どうやってこの拘束から逃れようか。声を掛けても勝己は起きそうにない。それなら力づくで…もぞもぞと勝己の腕の中で動き回る。居心地が悪くなったのか、勝己の眉間にシワがよる。
「…チッ…んだ、よ………」
『あ、起きた?』
「………は……?」
『うん』
自分の腕の中にいる人物を見て目が点になる勝己。現実だと受け止めたくないのか目を擦って、目の前にある光景を消そうとする。
「いや、あいつが俺のベッドにいるわけ……」
閉じた目をもう一度開けて、私を見る勝己。暫くお互い沈黙が続いたあと、勝己は思いっきり叫び、ベッドから飛び起きた。
「っ、だあああああああああああっ!!!」
「うるさいっ!!」
バァンと思いっきり扉を開けてかっちゃんママが入ってくる。スパァンと勝己の頭を叩いて、勝己の雄叫びに終止符を打った。